天馬、デュアルスタックOLEDの量産間近──来年のOLED市場に新たな変革の兆し


SemiDisplayView 2025年7月10日

 

最近、デジタル系ブロガー「定焦数码」によれば、天馬がデュアルスタックOLED(Tandem OLED)ディスプレイのサンプルを外部に公開し、今年下半期の量産開始が予定されているという。

天馬のこれまでの価格戦略に鑑み、業界関係者は2026年にはOLED市場で大きな変動が起きる可能性があるとみている。

 

デュアルスタックOLEDとは?

デュアルスタックOLED(Tandem OLED)は、従来の単層OLED構造にもう1層発光層を加えた技術であり、「タンデム(Tandem)」は直列接続を意味する。2層構造により、1層あたりの電場負荷を軽減でき、材料の劣化を抑えて寿命や安定性を大幅に向上させる。理論上のピーク輝度(ニット)も単層の2倍以上に達する。たとえば:

・Huawei Mate70 RS のディスプレイは ピーク輝度3500ニット

・iPad ProのデュアルスタックOLEDは、全画面で 1000ニット超の輝度、HDRモードでは 1600ニットに到達

この技術により、屋外視認性が向上し、発光負荷の分散で色の滑らかさも向上(色域カバー率+15〜20%)、光漏れも低減される。

 

消費電力の最適化と持続性

高輝度時には消費電力がわずかに上昇するが、同等輝度条件下では単層構造より約30%の消費電力削減が可能。

 

これは、「500ニットの照明を2つ重ねて1000ニットを出すような仕組み」で、電流負荷が減り、電場強度も約50%削減され、バッテリー持続時間が延びる。また、柔軟性を損なわず、折りたたみ型や曲面などの製品形状にも対応可能。加えて、単層OLEDにありがちな光漏れも抑えられる。

 

耐久性と劣化抑制

デュアル構造により、発光材料の劣化速度を単層構造の約1/6にまで抑制できる。

各層が発光負荷の半分ずつを担当することで、有機材料の劣化が大幅に緩和され、高輝度を必要とするシーンに最適。AppleのiPad Proに搭載されたデュアルスタックOLEDでは、ナノテクスチャガラスと直列回路設計によりさらに耐久性が向上している。

 

中価格帯への展開も視野に?

近年、デュアルスタックOLEDは主にハイエンドモデルに搭載されてきたが、天馬はこの技術の中価格帯への展開にチャンスがあると見て量産に踏み切った。重要なのは「製造可能か」ではなく:

・歩留まり(良品率)

・コスト

・経済性

LGの4層スタック構造やLTPO技術などの選択肢もあるが、天馬が量産において高い歩留まりと価格競争力を維持できれば、デュアルスタックOLEDは中価格帯スマートフォンにも広がる可能性がある。

 

グローバル市場の変動

近年、スマートフォン向けOLEDパネル市場は激変している。市場調査会社・群智咨詢によると、2024年の世界OLEDスマホパネル出荷量は8.5億枚(前年比+25.3%)。中国メーカーの出荷量:4.1億枚(世界シェア48.3%)→ 2枚に1枚が中国製という計算。出荷枚数上位メーカー:

Samsung Display:3.74億枚(44%、前年比-5.3pt)

BOE(京東方):1.38億枚(2位)

LG Display:7000万枚(+31.1%)

Visionox(維信諾)

天馬

TCL華星

中国OLEDメーカーが台頭し、韓国メーカーの技術的優位が相対的に弱まりつつある。今後はOLED市場の競争がますます激化していく見通しだ。