日本企業の独占だったディスプレイ用イオン注入製造装置、韓国で初の国産化に成功


2025年9月16日/ET News

 

日本依存だった装置、韓国で初めて国産化

これまで日本企業の独占領域とされてきたディスプレイ用イオン注入製造装置が、韓国国内技術によって開発された。今後、ディスプレイの量産工程に実際に採用されるかどうかが注目されている。

 

韓国政府が推進したディスプレイ用イオン注入製造装置の国家プロジェクトが、4年の歳月を経て完了した。2021年にスタートし、当初は2023年12月の終了予定だったが、延長され2025年6月まで続いた。

 

BOEやLGディスプレイなど大手企業も関与

産業通商資源部は2020年、国内の中堅・中小製造装置メーカーが開発を担い、サムスンディスプレイやLGディスプレイが需要企業として性能評価や事業化支援に参加する形でイオン注入製造装置を国産化すると発表していた。詳細は長らく非公開だったが、今回最終成果が明らかになった。

 

取材によると、サムスンディスプレイ向けの装置は協力会社エイチエンイルジャが、LGディスプレイ向けはアバコが開発を担当。特にアバコは次世代投資に備え、8.6世代の大型ガラス基板にも対応可能な装置を開発したとされる。

 

有機EL TFTにも不可欠な核心装置

ディスプレイ用イオン注入製造装置は、低温多結晶シリコン(LTPS)に高電流を印加してイオン(不純物)を注入し、抵抗の低い導電性物質に変える役割を持つ。近年では酸化物薄膜トランジスタ(TFT)へのイオン注入による電子移動度の向上が進んでおり、活用範囲が広がっている。とりわけ有機ELディスプレイのTFT工程において不可欠な核心装置のひとつだ。

 

これまでこの装置は日本製に全面的に依存しており、国内ディスプレイメーカーの主力である6世代ラインにはすべて日新イオンの装置が導入されていた。今回の国産化が商用化や輸入代替につながるかが大きな焦点であり、外国製独占体制を打破できれば装置価格の低減やサプライチェーンの安定化が見込まれる。

 

 

日新イオン機器株式会社の6世代イオン注入製造装置〈写真:日新公式ホームページ〉
日新イオン機器株式会社の6世代イオン注入製造装置〈写真:日新公式ホームページ〉

 

実用化には性能・信頼性の実証が必須

ただし、開発された装置を量産ラインに本格導入するには、性能や信頼性の検証が不可欠だ。装置選定においては通常、量産納入の実績が重視されるため、新規メーカーが納入するハードルは高い。パネルメーカー各社が積極的に導入に向けた検討を進める必要があるとの声も上がっている。

 

あるディスプレイ業界関係者は「外国製に全面依存してきた装置を政府予算を投じて国産化したこと自体に大きな意義がある」としつつ、「実際に使われなければ意味がない。企業側が前向きに活用可能性を検討する必要がある」と語った。