2025年10月9日 出典:WitDisplay(ウィットディスプレイ)
■ 国内生産強化から5年、依然として外国依存が続く韓国の製造業
韓国政府が「材料・部品・製造装置特別法」を制定し、国内生産を推進してから5年が経過した。しかし、韓国の先端戦略産業は依然として海外依存が深く、ロボット、次世代自動車、ディスプレイといった分野でも、日本や中国への依存度がむしろ高まっている。
専門家は、こうした構造がサプライチェーンのリスクを拡大させ、韓国産業全体の競争力を損なう恐れがあると警告している。
■ ロボット産業:需要拡大の陰で、日本・中国依存が強まる
韓国民主党の李在寛(イ・ジェグァン)議員が10月9日に公開した産業通商資源部のデータによると、2023年時点で韓国の製造業用ロボットの駆動部品における海外依存度は80.3%に達した。2021年の77.7%からさらに上昇しており、そのうち97.8%が日本からの輸入である。駆動部品とは、モーターや減速機、ドライバーなど、ロボットの関節を動かす中核部品である。
一方で、ロボットの「目」と「耳」にあたるセンサー類では、中国製の比率が急増している。カメラモジュールやトルクセンサー、エンコーダーといった部品のうち、51.5%が中国などからの輸入だ。2021年には日本製が74.3%を占めていたが、2023年には43.1%まで減少し、中国製の割合は23.2%から48.4%へ倍増した。制御部品でも、日本製が主流だった市場を2023年には中国製が95.8%で席巻している。
韓国内でのロボット需要は拡大しており、2023年のロボット産業総売上高は前年比1.5%増の5兆9805億ウォンに達した。しかし、主要部品の多くが輸入に頼る構造が続いており、価格競争力の低下が懸念されている。
Rainbow RoboticsのCTO、許正宇(ホ・ジョンウ)氏は「ロボット用のギア、モーター、センサーがすべて国内で生産されていないため、価格を海外製より高く設定せざるを得ない」と語り、「材料や製造装置の生産基盤が国内にないことが最大の課題だ」と指摘している。
■ ディスプレイ産業:有機EL・MicroLEDともに輸入依存構造
世界市場で存在感を持つ韓国のディスプレイ産業も、国内生産基盤の脆弱さが露呈している。
液晶(LCD)分野では、2022~2024年の主要部品――液晶材料、偏光板、カラーフィルター、ガラス基板、バックライトモジュール、露光装置――のすべてを海外から輸入している。国産化されているのは、駆動ICとエッチング装置のみとされる。
有機EL(OLED)分野では、2023年時点で材料・部品の国内生産率は約60%。発光材料や希土類原料、精密部品などは依然として日本や米国などの技術に依存している。製造装置については71%が国産化されたものの、露光装置や蒸着装置といった重要な製造装置はほぼ輸入に頼っている。
特に、有機ELの解像度と歩留まりを左右する精細金属マスク(FMM)は、日本製への依存度が95%を超える。透明粘着層(OCA)と上記のOLED蒸着装置の輸入比率も、それぞれ90%以上、80%以上に達している。発光有機材料の約67%も海外供給に依存する。
さらに、次世代技術として注目されるMicroLEDでも、LEDチップ(発光源)やシリコン基板(バックプレーン)などの主要部品は台湾・中国製が大半を占め、全体の90%以上が輸入である。光効率を左右するパッケージや光学部品も95%以上を海外に依存し、基板の約80%も輸入に頼っている。
業界関係者は、「LEDチップの大部分は台湾の錼創科技、バックプレーンは台湾AOI製に依存しており、もし供給が止まれば韓国ではMicroLEDの生産が不可能になる」と危機感を示す。
韓国政府は昨年、「事前可行性調査法」に基づき5000億~6000億ウォンの支援予算を確保したが、業界では「すでに中国に先を越された」との声が強い。
■ 未来自動車と電池材料:バッテリーの核心素材も中国依存
電動車や水素車、自動運転車といった次世代モビリティに不可欠な二次電池でも、韓国は中国への依存度を高めている。
産業通商資源部と韓国貿易統計局のデータによれば、2024年のニッケル水酸化物の輸入のうち96.4%が中国からであり、電池の正極材料に欠かせないリチウム水酸化物も82.7%を中国に依存している。天然黒鉛も97%以上が中国製で、人工黒鉛、酸化コバルト、二酸化マンガンといった主要材料も過去5年間で70~90%が中国産だった。
さらに、正極材料(前駆体や三元系活性材料)も80~90%が中国製であり、電池の安全性を左右するセパレーターも70%以上を中国に依存している。
政府は国産化政策を推進しているが、サプライチェーンの「中国リスク」は依然として高いままだ。
李在寛議員は「特定国への依存が続けば、国際情勢の変化によって韓国産業全体が揺らぐ危険がある」と警鐘を鳴らし、「材料・部品・製造装置の国産化を経済安全保障の柱と位置づけ、より積極的な政策支援が必要だ」と訴えた。