行家说Display|2025年8月20日
鴻海(Foxconn)B事業群 兼 デジタルヘルス総経理の姜志雄氏はこのほど、同社のAR(拡張現実)眼鏡製品について「消費者市場をターゲットとし、早ければ来年にも量産を開始する可能性がある」と発言した。さらに今後は、ウエハーレベルディスプレイ技術とMicro LEDを統合し、技術から応用までを一貫してつなぐエコシステムを構築していく方針を示した。
興味深いことに、同じ8月には歌爾股份(Goertek)もMicro LED企業の買収を発表。両大手EMS(受託製造)企業が相次ぎMicro LED ARに参入したことで、同技術の商業化加速と競争激化が一気に進みそうだ。
鴻海のMicro LED AR戦略
今回、鴻海はノーベルビジョン・テクノロジーと提携し、眼科学(Ophthalmology)や検眼(Optometry)の分野に焦点を当てた。姜氏は「この提携はAR眼鏡の医療応用に基盤を築く一方で、消費市場への展開も見据えている」と説明。当初リリースされる製品は医療用途ではなく、次世代の人機インタラクションに向けた消費者向けモデルになる見通しだ。
同氏はさらに、「近眼ディスプレイとアイトラッキングの融合こそ、AI時代における最有力の人機インターフェース」と強調。その鍵となるのがウエハーレベルディスプレイとMicro LEDであり、鴻海は部品・モジュールからシステム・アプリケーションに至るまで、サプライチェーンとエコシステム全体において重要な役割を果たすという。
昨年12月には、英Porotechと協業を発表。Porotechの窒化ガリウム(GaN)技術と鴻海のMicro LEDウエハープロセスを組み合わせ、AR用ディスプレイチップと眼鏡の量産を目指す。鴻海は台中に8インチMicro LEDウエハー製造ラインを建設中で、2025年第4四半期の量産開始を予定。月間500万個の0.1インチ微小ディスプレイ供給能力を目標に掲げている。
今年5月のSID展示会では、両社が材料・光学・モジュール・AR眼鏡組立までを含む「ワンストップARソリューション」を披露。さらにPorotechは新型InGaN赤色LED「SpectraCore™」を発表し、従来比で5倍の輝度と高い波長安定性・信頼性を実現した。
鴻海と歌爾、代工大手の本気度
一方、歌爾は8月に7億元でMicro LED企業を買収。MetaやAppleといった最終製品メーカーに対し、両社はEMSでありながらMicro LED ARソリューションを構築し、“スーパーサプライヤー”への脱皮を図っている。
歌爾は特にブランド企業との共同エコシステム構築に注力。MetaとはVR代工からARディスプレイ共同開発まで領域を拡大し、PlesseyのMicro LED技術を活用。小米(Xiaomi)陣営では投資と技術供与を通じ、眼鏡用光学モジュールの独占サプライヤーとなっている。
両社の取り組みは、Micro LED AR眼鏡の商業化が新たなステージに入ったことを示す。今後の勝負所は製造良率、技術進化のスピード、そしてコスト競争力になるとみられる。
注目すべきは、Porotechの「PoroGaN」材料とDPT®技術を用いた単一チップ全彩表示、PlesseyのGaN-on-Si方式による単片型Micro LEDなど、いずれもシンプルな製造プロセスと高性能を両立する新方式が台頭している点だ。ただし、大量生産に向けた良率確保は依然として課題であり、今後は「材料-チップ-最終製品」を垂直統合する動きが加速する可能性が高い。
10月、Micro LED/SiC ARサミット開催へ
Micro LEDやSiC基板といった化合物半導体は、AR眼鏡の消費市場浸透を後押しする重要技術とされる。こうした背景を受け、10月15日に「化合物半導体(SiC/Micro LED)×AR眼鏡技術革新フォーラム」が開催予定。産業チェーン各社や専門家が集まり、Micro LEDマイクロディスプレイやSiC光波導の量産化と商業化の展望を議論する。