Wit Display|2025年9月3日
サムスンディスプレイ、京東方(BOE)、維信諾(Visionox)、華星光電(CSOT)といった主要ディスプレイメーカーが、IT向けに次世代の8.6世代OLEDパネルへの投資を加速させている。関連設備への大型投資は、早ければ今年後半から来年にかけて本格化するとみられ、韓国のディスプレイ製造装置産業にとっても追い風となりそうだ。
8.6世代OLEDとは、ガラス基板サイズが2250×2600ミリメートルのパネルを指す。既存のIT向け6世代OLEDに比べてガラス基板の面積は約2倍となり、生産効率の大幅な向上が期待されている。そのため、世界の主要パネルメーカーがそろってこの次世代技術の採用を急いでいる。
サムスンディスプレイは、忠清南道牙山のA6工場に建設している第8.6世代OLEDの初期生産ラインを、今年末に試運転へ移行し、来年第2四半期にも本格量産を開始する計画だ。これは、同じ時期に予定されるアップルのiPad miniやMacBookの発売スケジュールと歩調を合わせた動きとされている。サムスンを皮切りに、来年には8.6世代IT向けOLEDの量産競争が本格化する見通しだ。
京東方も四川省成都において8.6世代IT向けOLEDの生産ラインを建設中で、当初より4か月前倒しで設備を導入し、今年10月からの量産を目指すなど、競合との差を急速に縮めつつある。同社は来年に約630億元規模の追加投資を行う予定で、月産能力は3万2000枚を計画。そのうち半分はすでに建設が進んでおり、残りの設備発注は年内から来年初めにかけて行われる見込みだ。
維信諾は2027年までに約550億元を投じ、8.6世代OLED量産ラインを整備する計画を発表している。月産能力は最終的に3万2000枚を目指し、まずはその4分の1にあたる8000枚規模から稼働を始める。最速で今年中にも稼働開始の可能性があるが、実際の設備発注は依然として調整中で、特に成膜プロセス方式の確定が今後の投資判断を左右する見通しだ。
一方、華星光電は業界に先駆け、溶液を微細ノズルで噴射する「インクジェット印刷方式」を8.6世代OLEDに導入する計画だ。この技術は必要な画素に必要な量の有機材料を直接塗布できるため、材料利用効率を高め、大型基板に適した大画面パネルの製造に有利とされる。同社は最終的に月産4万5000枚を目標に掲げ、まずは1万5000枚規模から投資を始める計画で、今年第3四半期中に投資方針を発表し、来年後半には設備据付を開始するとみられている。
業界関係者は、「中国大手各社が相次いで8.6世代OLEDへの巨額投資を表明したことで、国内外の製造装置メーカーも今年から来年にかけて準備を本格化させる。これらの大規模な動きは、今後の成果につながるだろう」と述べている。