BOE、上半期の有機EL出荷が7100万枚を突破 ― フレキシブルAMOLED事業が堅調に拡大


出典:WitDisplay/発行日:2025年9月30日 18:37

 

BOE(京东方)は2025年9月29日に開催した投資家向け説明会で、LCDの需給動向と価格トレンド、フレキシブルAMOLED事業の進展、ディスプレイデバイス事業の収益構成などについて詳細を明らかにした。以下に主要内容をまとめる。

 

LCD市場の需給と価格トレンド

同社は、業界全体で「需要に応じた生産」を実践しており、市場の変化に合わせて稼働率を柔軟に調整していると説明した。コンサルティング機関のデータによると、第1四半期は輸出需要の拡大と「旧機器買い替え」政策の追い風を受けて最終製品の需要が旺盛となり、業界全体で高稼働を維持。LCDテレビ用の主力サイズパネル価格は全面的に上昇した。

 

第2四半期に入ると国際貿易環境や政策効果の変化により調達需要がやや冷え込み、メーカー各社は迅速に稼働率を引き下げて対応。第3四半期からは在庫調整が一巡し、繁忙期の需要回復により稼働率も回復した。テレビ向けパネル価格は一部サイズで小幅下落後に安定し、IT向けLCD(モニター・ノートPC)は全体として価格が安定しているという。

 

フレキシブルAMOLED事業の進展

BOEはフレキシブルAMOLED分野で長年の投資を重ね、生産能力と技術の両面で優位性を確立している。スマートフォンの主要ブランドをほぼすべてカバーしており、さらに車載やIT向けなど中型サイズの応用分野にも積極的に展開している。2025年上半期の有機ELパネル出荷は7100万枚を超え、前年同期比7.5%増。国内首位・世界第2位のシェアを維持した。ただし、市場競争の激化や短期的な減価償却負担により、収益性の改善が今後の課題とされている。

 

ディスプレイ事業の収益構成

2025年上半期のディスプレイデバイス事業の売上構成は、テレビ向け27%、IT向け37%、LCDスマートフォンおよびその他12%、有機EL関連24%となった。

 

IT分野でのOLED技術の展開

フレキシブルAMOLEDは、優れた表示品質と薄型軽量の特徴に加え、折りたたみや巻き取りといった形状自由度を持つことから、ノートPC(NB)やタブレット(TPC)、車載ディスプレイなど中型製品への採用が拡大している。

 

この需要拡大に対応するため、BOEは2023年11月に第8.6世代AMOLED製造ラインの建設を発表。ノートPCやタブレット向け高級タッチ有機ELディスプレイを生産するもので、2024年3月に着工、同年9月に上棟を完了し、2026年末の量産を予定している。これによりBOEは国際同業他社と並び、高級市場での競争力を一層強化する方針だ。

 

今後の業界トレンド展望

ディスプレイ業界は現在「再均衡期」に入り、構造調整が進んでいる。供給面では新増産からストック運用段階へ移行し、需要面では在庫圧縮が加速。業界全体は「規模・シェア重視」から「高収益・高技術・高付加価値」志向へと転換しつつある。

 

技術的には、LCDが依然として中長期的に主流技術である一方、有機ELは高級市場で着実に成長している。LCDではテレビの大画面化や高解像度・高リフレッシュレート化が進み、OLEDではLTPO技術の採用拡大により、IT・車載など中型市場での成長が期待されている。

 

減価償却と投資動向

BOEによると、現在同社の8.5世代LCD生産ライン(北京・合肥・重慶・福州)はすべて減価償却を完了。また、第6世代AMOLED生産ライン(成都B7・綿陽B11・重慶B12)も固定資産化を完了している。新規ラインの稼働と既存ラインの償却完了により、2025年が減価償却費のピークとなる見込み。今後は製品ラインの最適化と運営効率向上を図るという。

 

また、LCD生産は成熟期に入り、今後の資本支出は戦略的重点分野である半導体ディスプレイ事業に集中。加えて、IoT、センサー、MLED、医療工学など高成長領域への投資を進め、「スクリーン・オブ・シングス」戦略の実現を目指す。