CSOT、8世代インクジェットOLEDへの投資計画を今月にも発表か


2025年8月6日 The Elec

 

中国のディスプレイメーカーCSOT(China Star Optoelectronics Technology)が、8世代インクジェット方式有機EL(OLED)パネルへの投資計画を、早ければ今月中にも発表する見通しであることが明らかになった。

 

CSOT技術企画センターの周明中(ジョウ・ミンジョン)センター長は、8月6日にソウルで開催されたK-ディスプレイ・ビジネスフォーラムで講演後、報道陣からの「8世代インクジェットOLEDへの投資の進捗状況」に関する質問に対し、「今月か来月に発表する予定」と短く答えた。

 

これに先立ち、ディスプレイ業界内ではCSOTによる8世代インクジェットOLEDの正式投資発表が間近に迫っているとの観測が相次いでいた。

 

CSOTは、今年5月に米国で開催された「SIDディスプレイウィーク2025」において、多様なインクジェット印刷方式のOLED(有機EL)パネルを展示した。(資料=CSOT)
CSOTは、今年5月に米国で開催された「SIDディスプレイウィーク2025」において、多様なインクジェット印刷方式のOLED(有機EL)パネルを展示した。(資料=CSOT)

 

業界関係者の一人は、「CSOTは当初、7月頃の投資発表を予定していたが、若干遅れている」と述べ、また別の関係者は「正式発表前に、CSOTが地方政府と投資規模や支援内容について最終調整を進めている」と話した。

 

CSOTは、2020年に『T8プロジェクト』として8世代インクジェットOLEDラインへの投資計画を打ち出していたが、その後は具体的なスケジュールが公表されていなかった。

しかし、昨年下半期以降、2025年中にCSOTが投資可否を決定するとの見方が業界内で広がっていた。

 

CSOTは、2025年5月に米国で開催された「SIDディスプレイウィーク2025」で、多彩なインクジェット印刷方式のOLEDパネルを出展し、高精細・高性能の次世代ディスプレイ技術をアピールしていた。

 

CSOTの技術企画センター長であるチョウ・ミンジョン氏は、6日に開催された「K-ディスプレイ ビジネスフォーラム」の基調講演において、インクジェット印刷方式OLED技術が進化していることを強調した。画素密度(PPI:Pixels Per Inch)は350PPIを超えたという。(写真=イ・ギジョン記者)
CSOTの技術企画センター長であるチョウ・ミンジョン氏は、6日に開催された「K-ディスプレイ ビジネスフォーラム」の基調講演において、インクジェット印刷方式OLED技術が進化していることを強調した。画素密度(PPI:Pixels Per Inch)は350PPIを超えたという。(写真=イ・ギジョン記者)

 

CSOT、インクジェット印刷OLEDの技術進展と量産体制を強調

中国のディスプレイメーカーCSOTは、インクジェット印刷OLEDの経済性を高めるためには、第8世代ラインの確保が不可欠であるとし、特にモニターやテレビなどの大型パネル生産に有利な特性が第8世代ラインでより活かされることを強調している。

 

インクジェット印刷方式OLEDの利点としては、常圧や低真空環境で製造可能であること、真空蒸着方式よりも大面積基板でのパネル製造に適していることなどが挙げられる。

 

CSOTは現在、中国・武漢にある「T5工場」で第5.5世代(1300×1500mm)インクジェット印刷OLEDラインを稼働中で、生産能力は月産2万枚(20K)。このラインでは、昨年11月より21.6インチの医療用OLEDパネルの量産が始まっている。

 

同社のチョウ・ミンジョン技術企画センター長は、8月6日に開催された「K-ディスプレイ・ビジネスフォーラム」で講演を行い、以下のように技術の進展を紹介した。

 

・画素密度は350PPIを超えた

・インクジェット印刷OLEDの開口率(Aperture Ratio)は、ファインメタルマスク(FMM)方式OLEDの最大3倍に達する

・青色OLED素子の寿命(LT95@1000nit)は、2020年の40時間から、来年には400時間に向上する見込み

 

また、報道陣から「インクジェット印刷OLEDにおける青色素子の相対的なサイズ」について問われた際には、「他の赤色・緑色素子と似たようなサイズになるだろう」とコメントした。これは、青色素子の効率が低いためにFMM方式では青が他より大きくなるのとは対照的である。

 

CSOTは過去にRGB素子のサイズが全て同一のOLEDパネルを展示していたが、最近では青色素子をやや大きくした製品も展示しており、技術的柔軟性を示している。青色素子を大きくすることは、寿命や効率向上の観点から有利とされている。

 

CSOT(華星光電)の周明中(チョウ・ミンジョン)技術企画センター長は、8月6日に開催された「K-ディスプレイ・ビズフォーラム」の基調講演で、インクジェット印刷OLED技術の進展を強調した。彼によれば、画素密度(PPI:Pixels Per Inch)は350PPIを超えており、青色OLED素子の寿命(LT95@1000nit)も、2020年の40時間から来年には400時間にまで延びる見通しだという。これは約10倍の向上となる。(写真=イ・ギジョン記者)
CSOT(華星光電)の周明中(チョウ・ミンジョン)技術企画センター長は、8月6日に開催された「K-ディスプレイ・ビズフォーラム」の基調講演で、インクジェット印刷OLED技術の進展を強調した。彼によれば、画素密度(PPI:Pixels Per Inch)は350PPIを超えており、青色OLED素子の寿命(LT95@1000nit)も、2020年の40時間から来年には400時間にまで延びる見通しだという。これは約10倍の向上となる。(写真=イ・ギジョン記者)

 

CSOT(華星光電)にとってインクジェット印刷OLEDは、韓国のパネルメーカーとの差別化を図るための重要な技術だ。中小型OLEDで用いられるファインメタルマスク(FMM)方式や、大型OLEDで主流のオープンメタルマスク(OMM)方式はいずれも、韓国メーカーが技術を主導している。一方、CSOTは、かつてJOLEDのインクジェット印刷OLED技術開発を支援していた日本の材料・装置メーカーとの協力も期待できる立場にある。実際、CSOTは2023年に経営破綻したJOLEDから、5.5世代インクジェット印刷OLEDラインの装置を引き継いでいる。

 

またCSOTは、2025年5月に米国で開催された「SIDディスプレイウィーク2025」において、さまざまなインクジェット印刷OLED製品を展示した。今年初めて公開された製品には、以下のようなものが含まれる:

・6.5インチ・スマートフォン向け(画素密度326PPI)

・酸化物(Oxide)バックプレーンを用いた14インチ・2.8K解像度のノートパソコン向け

・14インチ・1920×1200解像度のタブレット向け製品

 

CSOTの技術企画センター長であるチョウ・ミンジョン氏が、6日にソウルで開催された「K-ディスプレイ・ビズフォーラム」で講演を行っている。(写真=イ・ギジョン記者)
CSOTの技術企画センター長であるチョウ・ミンジョン氏が、6日にソウルで開催された「K-ディスプレイ・ビズフォーラム」で講演を行っている。(写真=イ・ギジョン記者)