2025年10月2日 出典:WitDisplay
ボーイングとの提携で航空ディスプレイ市場に進出
LGディスプレイは、世界最大の航空機メーカーであるボーイング社と提携し、航空機向け有機ELディスプレイの開発を加速している。有機EL(OLED)は、従来の液晶ディスプレイ(LCD)に比べて軽量かつ柔軟であるため、航空機の表示装置として最適な技術とされている。
業界関係者によると、LGディスプレイはボーイング社と共同で、高い信頼性と安全性を確保しつつ、航空会社および乗客に新たな体験価値をもたらす有機ELパネルの開発を進めているという。
「Shy-Tech」技術による航空機内表示の新提案
2025年4月、ドイツ・ハンブルクで開催された「国際航空内装博覧会(AIX 2025)」において、LGディスプレイはボーイング傘下のBoeing Encore Interiors社と共同で、客室用55インチ有機ELウェルカムディスプレイを発表した。
この製品は「Shy-Tech」技術を採用した初の航空機向けディスプレイであり、客室内装と一体化したデザインが特徴。乗客の搭乗前には控えめに環境と調和しつつ、ウェルカムメッセージ、フライト情報、座席情報などを表示する。
両社の協力関係は昨年から始まっており、AIX 2024ではLGディスプレイ、ボーイング、LIGネクスワンの3社が共同開発した航空機用有機ELの試作機を展示している。試作機では、客室の入口に設置する55インチ大型有機EL、天井向け曲面有機EL、仕切り用の透明有機EL、厨房用ディスプレイなど、多様な応用可能性を示した。
また、ボーイング社もこの協業を重視している。ボーイング韓国法人設立75周年の記者会見(9月24日開催)で、同社韓国代表のウィル・シェーファー氏は「LGと共に、有機EL技術を航空機にどのように応用できるか研究とプロジェクトを進めている」と述べている。
有機ELが航空市場で注目される理由
有機ELが航空機ディスプレイとして注目を集めるのは、その構造的利点による。バックライトを必要としないため、LCDよりも軽量で薄く、燃料効率の向上につながる。また、柔軟性や透明性に優れており、スペースが限られた機内での自由なデザインを可能にする。
さらに、有機ELは画素自体が発光するため、完全な黒の再現や高い色再現性を実現できる。機内のような暗い環境でも高い視認性を保てるほか、ブルーライトの発光量がLCDの半分程度に抑えられるため、長距離飛行時の乗客の疲労軽減にも寄与する。
市場調査会社によれば、世界の航空機ディスプレイ市場は今後も年平均5.7%のペースで成長し、2032年には4兆4,859億ドルを超えると予測されている。
航空用有機EL市場で主導的地位へ
LGディスプレイの関係者は、「世界の主要航空メーカーと連携した研究開発を通じ、安全性だけでなくデザイン性や体験価値においても差別化された航空機用有機ELソリューションを提供していく」とコメントしている。
さらに、「今後も技術力を高め、有望な航空ディスプレイ市場で主導的なポジションを確立する」と意欲を示した。
業界では、このボーイングとの協業がLGディスプレイの新たな成長エンジンになると見られている。ある関係者は「世界最大の航空機メーカーであるボーイングとの緊密な提携により、LGディスプレイは航空機用有機EL市場で優位な立場を確立した。これにより、従来のテレビやIT中心の有機EL事業から、航空・モビリティ分野へと事業領域を拡大する好機となるだろう」と述べている。