2025年10月31日|出典:The Elec
出荷目標、600万台台から700万台へ ― 市場需要の回復を見込む
LGディスプレイは、2026年の大型ホワイト有機EL(W-OLED)の出荷目標を700万台前半に設定した。これは、2025年の目標である600万台台半ばから約10%の増加にあたる。目標値にはテレビ用とモニター用のW-OLEDを合わせた総出荷台数が含まれる。
同社は10月30日の第3四半期決算発表後のカンファレンスコールで、「液晶ディスプレイ(LCD)と比較して、有機ELの差別化された価値が市場で評価されつつあり、価格も受け入れられる水準に近づいてきた」と述べた。その上で、「来年は今年を上回る700万台強の出荷を目標としている」と説明した。
さらに同社は、「大型有機ELを用いたゲーミング向けOLEDモニターの需要が大きく成長しており、今年の大型OLED出荷全体に占める割合は10%台前半になる見通しだ」と補足した。
2025年の出荷は600万台台半ばを維持 ― ただし攻勢目標の達成は難航
LGディスプレイの2025年W-OLED出荷目標は600万台台半ばで、7月時点の見通しから変更はない。同社は「外部環境および経営条件の不確実性が続く中でも、600万台半ばを維持する見込み」とコメントした。
ただし、上期には控えめな見通しを示していたことから、同社の掲げる攻めの目標は完全には達成されなかったと見られる。業界関係者によると、「サムスン電子がLGディスプレイから調達するW-OLEDの数量は昨年より増加した一方で、LG電子やソニーの購入量は減少した」という。
LGディスプレイがW-OLEDラインでテレビパネルのみを生産すると仮定した場合、年間最大1,000万台のTV用W-OLEDを生産可能とされる。実際の出荷実績は、2023年が410万台、2024年が570万台にとどまっており、今後の生産能力の活用が課題となっている。
ガラス基板投入能力は月13.5万枚を稼働中 ― 実需に応じた柔軟な生産運用
LGディスプレイは、2025年のW-OLED(ホワイト有機EL)ラインのガラス基板投入能力(input capacity)が、前年とほぼ同水準であることを示唆した。
この「投入能力」とは、実際に製造ラインに投入して生産できる基板枚数を指し、稼働率によっては設計上の最大生産能力(design capacity)よりも少なくなることがある。
同社によると、「W-OLEDの生産能力は第8.5世代基板で月18万枚(180K)規模であり、現在は約13万5,000枚(135K)を量産に活用している」とのことだ。さらに、「今後も実際の需要と連動させながら、生産能力を柔軟に運用していく」と説明した。
LGディスプレイが2024年4月に米国証券取引委員会(SEC)へ提出した事業報告書(Form 20-F)によると、2024年時点の大型有機ELラインにおけるガラス基板投入能力は月13.3万枚(133K)だった。この数値は、大型有機ELを量産する坡州(パジュ)のOP1工場と中国・広州のOLED工場(CO)を合算したものだ。年度別に見ると、W-OLEDラインの月間投入能力は以下のように推移している:
・2021年:月17.5万枚(175K)
・2022年:月16.0万枚(160K)
・2023年:月10.4万枚(104K)
・2024年:月13.3万枚(133K)
コロナ後の需要変化と黒字転換への道筋
2020年6月以降、新型コロナの影響で約1年間、LCD価格が急騰し、LCDと有機ELの価格差が縮小した。この期間、有機ELテレビの販売も好調だった。
しかし、2022年から2023年にかけてLCD市場の特需が終息すると、有機ELテレビの需要も減少。2024年にはやや回復の兆しを見せた。
LGディスプレイの鄭哲東(チョン・チョルドン)社長は、2025年3月の株主総会で「大型有機EL事業は強化された顧客基盤をもとに、超大型テレビやゲーミング用途などへの販売を拡大し、コスト革新を進めることで、今年中に黒字構造へ転換できるようにする」と述べた。総会後、記者から「今年中に大型有機EL事業を黒字化するという意味か、それとも黒字転換の基盤を整えるという意味か」と問われると、「年末に成果が出れば改めてお話しします」と短く答えた。
そして10月30日、同社は「4年ぶりに年間黒字転換が確実視される」と発表した。第3四半期の業績は売上高6兆9,570億ウォン、営業利益4,310億ウォンで、前年同期比で売上は2.0%増加し、営業利益は赤字から黒字に転じた。2025年1〜9月期の累計では売上高18兆6,092億ウォン、営業利益3,485億ウォンで、売上は前年同期比0.9%減少したものの、営業損益は黒字化し、前年同期比で約1兆ウォンの改善を達成した。