LGディスプレイ、次世代LTPO3 OLEDの量産に向け投資開始 — Apple向けiPhoneシリーズに対応へ


2025年10月15日 SemiDisplayView

 

Apple次世代OLED iPhoneに備え、LGディスプレイが坡州工場の改造を決定

LGディスプレイは、2026年に予定されるAppleの次世代有機EL(OLED)iPhoneシリーズに向け、製造ラインの改造投資を来年から開始する計画である。韓国メディアの10月15日の報道によると、LGディスプレイは2026年初頭から坡州(パジュ)AP4ラインへの転換投資を本格化させる予定で、装置の設置は来年第1四半期中に完了するとみられている。

 

同社はすでに6月中旬、坡州にある中小型OLED工場に対して約7,000億ウォン(約770億円)の製造装置投資を発表しており、投資期間は2025年6月17日から2027年6月30日までの約2年間とされている。この投資に関連して、協力企業の一部はすでに今年第4四半期に発注書(PO)を受領しているという。坡州P9工場内のAP4ラインでは、主に中小型LTPO OLEDの量産が行われており、今回の投資はその拡張・更新を目的とするものと見られる。

 

LGディスプレイは現時点で、今回の投資の具体的な内容や目標を明らかにしていないが、韓国ディスプレイ業界では「主にTFT(薄膜トランジスタ)技術の高度化を狙い、Appleへの供給能力を強化するための戦略的投資」と分析されている。

 

韓国業界関係者によれば、LGディスプレイが導入を準備している製造装置は、TFTおよび蒸着工程に関連するものが中心であり、2026年第1四半期から年末にかけて段階的に導入が進む見込みだという。

 

Appleが推進する「LTPO3」構造、LGディスプレイが量産体制を構築

TFT(薄膜トランジスタ)は、薄膜材料で形成されるトランジスタであり、有機ELディスプレイ内では画素に電力を供給する駆動用TFTと、電流を制御するスイッチングTFTの2種類が統合されている。

 

OLEDの種類は、このTFT層にどの材料を使うかによって分類される。シリコンを用いたものが「LTPS(低温多結晶シリコン)」、一部層を酸化物(Oxide)で置き換えたものが「LTPO(低温多結晶酸化物)」である。LTPOはLTPSに比べて電力効率が高く、スマートフォン業界では採用が急速に拡大している。

 

特にAppleは、TFT構造における酸化物層の使用比率をさらに高める計画を進めている。従来のLTPO構造では、酸化物は比較的単純なスイッチングTFTにのみ用いられていたが、Appleはこれを駆動TFTにも適用する新設計を開発中である。この新構造はApple社内で「LTPO3」と呼ばれており、より高い電力効率を実現できるとされている。

 

業界関係者の見立てでは、Appleは2027年にもLTPO3を採用した次世代iPhoneシリーズを投入する見通しであり、LGディスプレイの今回の投資は、このLTPO3の量産体制をいち早く整備し、Appleの将来的な需要に応える狙いがあるとみられる。