出典:WitDisplay/2025年10月15日
大型W-OLED技術の流出を懸念し、協力企業に警告
LGディスプレイは今月初め、複数の協力企業に対し、大型白色(W)有機EL技術の漏洩を防止するよう求める正式な書簡を送付したことが確認された。
10月15日に複数の業界関係者が明らかにしたところによると、LGディスプレイは文書の中で「最近、競合他社がW-OLED製品の開発を進めていることを把握しており、懸念を抱いている。現在、当社では技術および情報セキュリティを一層強化している。貴社(協力企業)におかれても、相互の信頼に基づき当社の技術を保護し、情報管理を徹底してほしい」と要請した。
さらに同社は、「もし競合他社が、当社と共同開発したW-OLEDの部品や技術、あるいは協業を通じて得た情報に関して問い合わせてきた場合には、回答する前に必ず当社に相談してほしい」と念を押している。
業界関係者によれば、LGディスプレイがこのような正式文書で協力企業に技術流出防止を促すのは極めて異例だという。ある関係者は「LGディスプレイが過去にも文書で技術保護を求めたことはあるが、その件数はごくわずかだった」と語った。
競合各社の動向とLGディスプレイの警戒背景
LGディスプレイは書簡の中で特定企業名を挙げてはいないが、文中の「競合他社」は中国国内の大手メーカーを指しているとみられている。中国のある大手企業は、合肥工場のシリコン基板を用いたW-OLED中試ラインでテレビ向けのW-OLED開発を進めており、55インチや65インチのディスプレイを試作中だ。このラインは第8.5世代ガラス基板を用い、月産2,000枚規模とされている。現時点ではテレビ用W-OLEDの量産は難しいが、特定のディスプレイモデル向けに少量生産が行われているという。
昨年の第3四半期には、BOE(京东方)がサムスン電子などとディスプレイ用W-OLEDの販売をめぐって協議していた。当時、BOEはサムスン電子などへの供給を提案したが、サムスン電子はテレビ用W-OLEDパネルの生産可能性について確認を求めた。しかし、業界の見方では、BOEがテレビ用W-OLEDを量産するのは困難であり、生産能力と歩留まり率の問題に加え、テレビ市場でのOLED浸透がまだ限定的であると指摘されている。
一方、テレビ用OLED市場で競合が増えることは、LGディスプレイにとって好ましくない展開だ。サムスンディスプレイは大型量子ドット(QD)-OLEDの生産ラインで、主にディスプレイ用パネルの生産効率を高めることに注力しており、テレビ用への拡張は抑え気味だ。
LGディスプレイにとって、サムスン電子およびLG電子のOLEDテレビ出荷台数の増加は、自社のW-OLEDライン稼働率を押し上げる要因となる。
同社は、2025年のテレビ用W-OLEDパネル出荷量を約600万枚と見込み、このうちサムスン電子向けが約90万枚に達する見通しを示している。また、2026年にはテレビ用W-OLED全体を600万枚規模で維持し、サムスン電子向けを100万枚程度に増やす計画だとしている。