OLEDoSがサプライチェーンとアプリケーションの両面で急成長──2030年にはVR/MR搭載率が58%に達する


2025年10月20日|出典:TrendForce 集邦コンサルティング

 

OLEDoS、供給網と応用端の“ダブルブレークスルー”

Apple(アップル)は、アップグレード版のVision Proを通じてOLEDoS(有機EL on Silicon)ディスプレイを中核とするVR/MRヘッドセット事業を再び強化している。新製品では演算性能の向上と装着時の重量バランス改善に注力しており、プレミアム市場での存在感を高める構えだ。

 

TrendForce集邦コンサルティングが発表した最新レポート「2025年 近眼型ディスプレイ市場のトレンドと技術分析」によると、OLEDoSは中・高級VR/MR機器に適したディスプレイ技術として、供給チェーンと応用端の両方で大きな進展を遂げている。報告では、OLEDoSのVR/MR市場での採用率は2030年に58%へ急速に上昇すると予測している。

 

現在、Meta、Apple、Sony(ソニー)など国際ブランドの出荷台数は当初予想を下回っており、2025年の世界VR/MR製品出荷量は約560万台に減少する見込みだ。しかし中長期的には、主要ブランドによるソフトウェアとハードウェアの両面でのアップグレード戦略が功を奏し、2030年には世界出荷台数が1,440万台に達すると見込まれている。

 

 

中国勢の台頭と国際ブランドのAI統合戦略

TrendForceは、「ディスプレイ技術はVR/MR製品価格を左右する主要因」であると指摘する。現時点では高コストパフォーマンスを誇るLCDが主流だが、中国メーカーによるOLEDoS生産ライン拡張と、国際ブランドの高解像・軽量化ニーズの高まりにより、今後OLEDoSの採用率は急速に上昇すると予想される。

 

供給網の面では、Sonyに加えてSeeya(視涯)やBOE(京东方)、Sidtek(熙泰)など10社以上の中国企業が12インチラインを積極的に構築中であり、製造プロセスの歩留まり改善によって生産コストの削減が進行している。

 

一方、応用面では、AppleとSamsung(サムスン)は共に生成AIとアプリケーションプラットフォームの連携強化を進めている。Appleの次世代Vision Proは、新しいM5チップを採用して演算能力とバッテリー持続時間を向上し、AI処理とアプリの実行速度を大幅に高める見込みだ。

 

SamsungはGoogle(グーグル)やQualcomm(クアルコム)と提携し、4K解像度OLEDoSディスプレイを搭載したGalaxy XRを開発。Android XRプラットフォームを通じてスマートフォンやタブレットのアプリケーションを統合的に利用できるようにし、エコシステム全体の一体化を進めている。

 

また、Metaは自社エコシステム強化と並行して、0.9インチOLEDoSとPancake光学構造を組み合わせた新型デバイスを計画しており、現行VR/MR製品の形状や重量面での制約を打破することを狙っている。

 

TrendForceは、コスト低減と技術進化の両輪がそろうことで、OLEDoSが中高級機から主流市場へ浸透し、VR/MR産業の次世代転換を牽引する原動力となると結論づけている。