BOE、今年12月に成都の8.6世代OLEDラインを前倒しで稼働


2025年9月17日 出典:文涛

 

成都で進む8.6世代LTPO AMOLEDラインの建設

中国ディスプレイ大手のBOEは、2023年末に成都で8.6世代フレキシブル基板LTPO AMOLED生産ラインを建設する計画を正式に発表し、2024年初頭に地元政府との協定を締結した。同年4月には「B16」新工場の建設を開始。当初の計画では2026年5月に工場建設を完了し、同年10月に量産を開始、2029年に全面稼働する予定だった。

 

サプライヤー問題を乗り越えたB16ライン

B16ラインに必要なFMM(精細金属マスク)張力装置を供給する韓国Hansong Neotechは以前に深刻な財務危機に直面し、B16建設全体の進行に遅れが出た。しかしその後、同社は問題を解決し、BOEと約1,600万米ドル規模の契約を締結。こうした課題を経て、B16は2024年3月27日に起工し、同年7月31日にB/C区画の主体構造を上棟、9月25日に全面上棟を達成した。さらに2025年5月には予定より4か月早く装置搬入を開始し、現在の情報では2025年12月にライン点灯、2026年に量産開始の見通しとなっている。

 

フレキシブル基板とガラス基板の両対応工法

サムスンディスプレイが8.6世代ラインでガラス基板ベースのハイブリッドOLED製造ラインを採用しているのに対し、BOEは約4.1兆ウォンとされるサムスンディスプレイの投資額の3倍に及ぶ巨額投資を行い、フレキシブル基板とガラス基板の両方に対応する製造ライン方式を導入した。このため、B16ラインはスマートフォンやIT機器向けのフレキシブルOLEDパネルを製造できると期待されている。

 

ノートPCや車載ディスプレイ向けにシフト

一方、BOEはB16ラインのスマートフォン向け生産の経済性について慎重に評価しており、8.6世代ラインは既存の6世代ラインに比べて歩留まりが劣ると見ている。特に450ppi以上の高精細FMM工程では良率確保が難しく、FMMコストの上昇も懸念材料となっている。このため業界では、B16ラインの初期量産品は中国ブランドのノートPC向けパネルや、アップルが開発中とされる14.8インチMacBook向けパネルになるとの見方が強い。スマートフォン向けOLEDパネル生産の歩留まりが不足すると予想されるので、BOEは車載ディスプレイなど代替用途の開拓にも力を注いでいる。