BOE、年末にも8.6世代有機EL蒸着製造装置を追加発注へ ― 韓国勢を追い上げる中国勢


2025年9月25日 文涛

 

BOE、Sunic Systemに8.6世代有機EL製造装置を追加発注

9月25日の報道によると、京东方(BOE)は早ければ今年末にも、韓国Sunic Systemに対して8.6世代有機ELパネル蒸着製造装置を2台追加発注する見通しだ。BOEは今年5月、四川省成都にある8.6世代有機ELパネル生産ライン(B16)に同社の8.6世代蒸着製造装置を2台導入しており、月産約1万5,000枚の生産量を確保している。当初計画は月産3万枚だったが、今回追加投資に踏み切る。

 

BOE B16ラインの双層(タンデム)技術優位性

BOEのB16ラインは「双層(タンデム)技術」で優位性を持つとされる。この技術はRGB発光の有機材料を2層に積層することで有機ELパネルの寿命を延ばすものだ。Sunic Systemは、同技術を最初に開発したLGディスプレー(LGD)と協力して、8.6世代の蒸着製造装置を開発してきた。

 

中国勢、量産時期を前倒しし韓国勢に迫る

BOEは当初2025年下半期としていた8.6世代有機ELパネルの量産時期を、2025年上半期へと前倒しする計画だ。これは、サムスンディスプレーが約6か月前倒しで投資している8.6世代生産ラインとほぼ同時期にあたる。また、維信諾(Visinox)やTCL華星(TCL CSOT)も8.6世代有機EL生産ラインへの投資をすでに発表している。サムスンディスプレーは、忠南牙山の8.6世代生産ラインで年末から量産を始め、月産能力は1万5,000枚を見込む。

 

IT・車載向け有機EL市場の急成長

有機ELパネルは現在、主にタブレット、ノートPC、モニターなどIT機器向けに使われている。現在はスマートフォン向け有機ELパネルが市場全体の約80%を占めるが、今後はIT・車載向けの比率が高まると見られる。Omdiaの予測では、IT・車載向け有機ELの需要は2025年に2,200万台、2032年には1億700万台へ拡大し、有機ELパネル市場全体の21%に達する見通しだ。

 

同社はまた、2027年下半期までは韓国企業がIT向け有機ELの生産能力で63%のシェアを維持するものの、翌年には中国が追い抜くと予測。2028年には中国の8.6世代有機ELパネル生産能力が韓国を上回り、2030年には中国が66%、韓国が34%を占める可能性があるという。Omdiaは「韓国企業がグローバルなモバイルPC市場の急拡大に対応できなければ、優位性を保つことは難しくなる」とし、「韓国企業はこの成長トレンドに即応し、技術力を高め積極投資を行う必要がある」と警鐘を鳴らしている。