BOE、新しい封装技術でMicro LEDの光効率を向上


日付:2025年10月21日|出典:JMInsights集摩咨询

 

Micro LEDの光損失と色偏問題に挑む新設計

BOE(京东方)の研究チームは、学術誌『Information Display』に「新型封装設計によるMicro LEDディスプレイの光学効率向上(Novel Package Design Enhances Optical Efficiency of Micro LED Displays)」と題した論文を発表した。この研究では、Micro LEDのチップ側壁からの強い発光や、光利用率の低下、色ずれなど、業界で課題となっている技術的問題を解決する新しい封装(パッケージ)構造を提案している。

 

Micro LEDの画素サイズが50μm以下に縮小すると、相対的にチップ側壁の面積が大きくなるため、側方発光が増し、上方向への発光が減少する。その結果、輝度の低下や色彩の偏りが生じ、高精細ディスプレイ用途での性能向上が妨げられてきた。

 

この課題に対して、BOEの研究チームは「高屈折率透明樹脂」「白色高反射樹脂」「微小レンズアレイ」「パターン化ブラックマトリクス(BM)」を組み合わせた複合封装構造を開発。チップ上部に屈折率が段階的に変化する層を設けることで、光の放出角度を最適化し、臨界角を25度から最大65.9度まで拡大。これにより、チップ上方向への光取り出し効率を大幅に向上させた。

 

さらに、白色反射樹脂をチップ間に等腰台形状に配置することで、散乱光を集中させ、0度視角での輝度を約27%向上。プラズマ処理による残留樹脂の除去技術も導入し、光の通過を妨げない構造を実現している。

 

マイクロLEDディスプレイの微細構造パッケージ設計プロセス(画像提供:Information Display)
マイクロLEDディスプレイの微細構造パッケージ設計プロセス(画像提供:Information Display)
(a)MicroLEDの構造、(b)チップ内部の発光方向、(c)配光 (画像提供:Information Display)
(a)MicroLEDの構造、(b)チップ内部の発光方向、(c)配光 (画像提供:Information Display)

 

光学制御とコントラスト性能の最適化

光学特性の制御面では、ナノインプリント技術を用いて高精度な微小レンズアレイを形成。これにより、±60度以内での光線の効率的な収束が可能になった。シミュレーションの結果、レンズの曲率を0.03、屈折率を1.85に設定した場合、光強度が53%以上増加することが確認された。

 

また、封装ガラス層にパターン化されたブラックマトリクスを導入することで、反射率を2%未満に抑制し、20,000:1を超える高コントラストを実現。これにより、ディスプレイの表示品質が飛躍的に向上した。

 

BOEの研究チームは、この新しい封装構造は光学効率と均一性の両面で成果を上げるとともに、信頼性の向上にも寄与していると説明している。ガラスカバー層とOCA層の組み合わせにより、防水性・耐酸化性・耐摩耗性が高まり、Micro LEDの車載ディスプレイ、AR/VRヘッドセット、ウェアラブルデバイスなどへの量産応用に道を開いた。

 

BOEは今回の成果により、最新のMicro LED研究の進展を示すと同時に、Mini/Micro LED直視型ディスプレイ技術とその実用化をさらに推進していく構えを見せている。