WitDisplay|2025年8月26日
京東方科技集団(BOE Technology Group、以下BOE)が、サムスン電子などにディスプレイ用WOLEDの供給を検討していることが分かった。これは、ゲーミングモニターを含む高付加価値ディスプレイの需要拡大に対応する狙いとみられる。
サムスンと協議、テレビ向けにも関心
8月26日付けの複数の業界関係者によると、BOEは最近、サムスン電子などと会談し、ディスプレイ向けW-OLED供給について協議を行ったという。この過程で、サムスン側はテレビ用WOLEDパネルの生産可能性についても質問したとされる。
BOEは安徽省合肥にあるW-OLED試験ライン(ハーフカット方式)で55型・65型のテレビ向けWOLEDを開発中だ。このラインは第8.5世代ガラス基板を使用し、月産能力は約2000枚(2K)。量産化はまだ難しいものの、供給能力としては特定モデルのモニター需要を賄う水準にある。ただし現時点では生産量はごく限られていると伝えられている。
LGD・サムスンDとの比較
現在、LGディスプレイのWOLED月産能力は18万枚、一方でサムスンディスプレイのQD-OLEDは月産3万枚とされる。仮にサムスンディスプレイがQD-OLEDラインの月産3万枚をすべてモニター向けに投入した場合、年間生産量は約1000万枚に達する(パネルサイズにより変動あり)。
拡大するOLEDモニター市場
OLEDモニター市場はまだ規模こそ小さいが、高収益をもたらす分野として急成長している。市場調査会社TrendForceによると、2025年の世界OLEDモニター出荷量は266万台に達し、前年比86%増と見込まれている。成長を牽引するのはゲーミングモニターだ。
TrendForceは、この成長トレンドは今後5年間続くと予測しており、BOEがサムスン電子などにWOLED供給を打診する背景には、こうした市場動向があるとみられる。
サムスンの採用は不透明
ただし、サムスン電子がBOEのWOLEDを採用するかどうかは依然として不透明だ。現在、サムスン電子が販売するOLEDモニターはすべてサムスンディスプレイ製QD-OLEDを搭載。QD-OLEDは量子ドットカラーフィルターを用いることで、WOLEDよりも色再現性に優れるとされる。サムスンはすでにLGディスプレイからテレビ向けWOLEDを調達しているが、モニター向けWOLEDは未採用だ。
さらに、サムスンがBOEのテレビ用WOLEDを調達する可能性も現状では低い。BOEは生産能力の制約が大きく、短期的にOLEDテレビの出荷量を急増させるのは難しいとみられる。
ある業界関係者は次のように指摘する。「LGディスプレイは製造コスト削減に注力しており、来年にはテレビ用WOLED駆動ICに倍速駆動(DRD)方式を採用する予定です。サムスン電子にとっては、引き続きLGディスプレイからWOLEDを調達する方が経済的メリットがあります。」(TheElec報道より)