LGディスプレイ、iPhone向けタンデムOLEDを開発中


WitDisplay|2025年8月27日

 

LGディスプレイ(LG Display)が、ノートPC向けにLTPO(低温多結晶酸化物)タンデムOLEDパネルを開発したことが明らかになった。業界では、同社がこの技術を足掛かりに次世代iPhone向けタンデムOLEDの供給を狙っているとの見方が広がっている。

 

MacBook市場よりiPhoneに照準か

アップルのMacBookシリーズは酸化物TFTを採用する方針を取っており、LGディスプレイがこの領域に食い込むのは難しい。しかし、タンデムOLEDが持つ省電力性と長寿命の特性から、スマートフォンを中心とするモバイル市場においては依然として採用余地が大きいと分析されている。

 

LGディスプレイの2025年上半期報告によれば、同社はすでに14インチLTPOタンデムOLEDを開発し、年内の量産開始を計画中だ。ノートPCやPC市場で先行する一方、その技術力をモバイル向けにも横展開しようとしている。

 

LTPO×タンデムOLEDの優位性

LTPOは、LTPS(低温多結晶シリコン)の高速電子移動特性と、酸化物TFTの低リーク電流・低消費電力特性を兼ね備える技術。

一方、タンデムOLEDは発光層を二層以上積層する方式で、単層構造に比べて輝度・寿命が向上し、同じ輝度なら消費電力を低減できる。

 

LGディスプレイはこれまでに、車載やPC向けで実績を積んでおり、すでにDellには13インチタンデムOLEDパネルを量産供給している。また、2024年にはアップルのiPad Pro向けにLTPO+タンデム構造のOLEDパネルを提供し、同分野でのシェア65%を獲得したとされる。

 

競合との比較と課題

ただし、今回開発されたLTPOタンデムOLEDノートPCパネルはMacBook向けではないとの指摘もある。アップルはMac製品で酸化物TFTを要求しており、サムスンディスプレイが第8.6世代OLEDラインで酸化物TFT投資を進めている。

 

一方、LGディスプレイはタンデムOLED分野で特許・実用化実績ともに世界トップとされる。Patentpiaのデータによれば、米国で公開されたタンデムOLED関連特許は348件で、全体の25.2%を占めるという。

 

サムスンディスプレイはやや後れを取っているが、2025年以降は車載OLEDでタンデム構造を全面導入する方針と伝えられる。

 

iPhoneへの採用はあるか

アップルがiPhoneにタンデムOLEDを採用するかどうかは依然として不透明だ。しかし、LGディスプレイはすでにアップルに対し直板型iPhoneへのタンデムOLED導入を複数回提案しているとされる。

 

業界関係者によれば、そのターゲットは2028年モデルのiPhone。省電力性と長寿命という特性から、スマートフォン向けには極めて有望だと見られる。同関係者は次のように述べている。「LGディスプレイは、タンデムOLEDの二層構造に伴う生産効率低下を補うための投資を検討しており、将来のモバイル向け量産に備えている」。

 

展望

タンデムOLEDは、当初は車載用に導入された技術だが、ノートPC、タブレット、そしてスマートフォンへと応用が広がりつつある。もしiPhoneに採用されれば、OLED市場全体にとっても大きな転換点となりそうだ。