Visionox、第8.6世代OLED製造装置を発注 — 合肥でFMM不要の次世代AMOLEDライン建設が加速


2025年10月11日|出典:WitDisplay

 

合肥国顯、第8.6世代AMOLED生産ラインで主要製造装置を追加発注

中国のディスプレイメーカーVisionox(维信诺)が、合肥市と共同で設立した合肥国顯科技有限公司(以下、合肥国顯)を通じ、第8.6世代AMOLED生産ライン向けに複数の主要製造装置を新たに調達した。必联网が発表した「第8.6世代有機ELディスプレイ製造ライン入札結果公告」によると、同社は主要工程に関わる複数の機器メーカーを選定した。

 

今回の入札では、アプライドマテリアルズ・シンガポール(Applied Materials South East Asia Pte. Ltd.)が蒸着装置、マグネトロンスパッタリング装置、プラズマ強化気相成長(PECVD)装置の受注に成功。さらに、露光装置についてはキヤノン株式会社が落札したことが明らかになっている。

 

世界初のFMMレス第8.6世代AMOLEDライン、わずか168日で主棟上棟

2025年8月11日、合肥国顯は第8.6世代AMOLED生産ラインの主要工場建屋が無事に上棟したと発表した。この新ラインは「世界初のFMM(ファインメタルマスク)非使用技術」を採用するAMOLED生産ラインであり、合肥新站高新区に建設されている。

 

同プロジェクトは、Visionoxと合肥市の投資プラットフォームが共同出資し、建設および運営を合肥国顯が担当。総投資額は550億元に達し、設計生産能力は月3.2万枚のガラス基板(サイズ2290mm×2620mm)とされている。2025年2月の着工以降、効率的なスケジュール管理やリソース最適化、技術的課題の克服を通じ、わずか168日という短期間で主要建屋の封頂(上棟)を実現した。

 

Visionox独自のViP技術、AMOLEDの構造と性能を根本から刷新

この生産ラインでは、Visionoxが独自開発した「ViP技術(Visionox Intelligent Pixel)」が採用されている。ViP技術は半導体の光リソグラフィ工程を応用して有機EL画素を形成するもので、従来のFMMプロセスから完全に脱却。独立した画素形成、高精度、高歩留まりを同時に実現し、AMOLEDパネルの切断効率と経済性を大幅に向上させる。

 

この技術は、タブレット、ノートPC、車載ディスプレイなど中・大型の高性能ディスプレイ市場に最適なソリューションを提供するものであり、Visionoxにとって次世代市場拡大の核となる。

 

AMOLED市場の急拡大とAI時代への適応

Omdiaの調査によると、消費電子機器およびスマートカー市場における高性能ディスプレイ需要が急速に拡大しており、AMOLEDの中サイズ領域への浸透が加速している。中サイズIT製品と車載ディスプレイの年平均成長率はそれぞれ26.5%と30.6%に達し、2030年にはIT向けAMOLED出荷数が8420万枚、車載向けが1220万枚に到達すると予測されている。

 

また、2025年は「AIディスプレイ元年」と位置づけられており、AI技術の導入がディスプレイ製造やインタラクション体験を変革していく。AIスマートフォン、AI PC、AR/VRデバイスなどの登場により、ディスプレイ性能への要求は一段と厳しくなっており、ViP技術はまさにこの需要変化に応えるタイミングで登場した。

 

ViP AMOLEDがもたらす新時代 — 高解像度・低消費電力・長寿命化

従来のFMM方式AMOLEDと比較して、ViP方式AMOLEDは解像度、消費電力、寿命といった主要性能指標で飛躍的な向上を実現している。これにより、スマートフォン、ノートPC、車載ディスプレイ、AR/VRといった幅広い応用分野において、より鮮明な映像表現、長い稼働時間、安定した動作を提供可能となる。

 

合肥国顯の第8.6世代ラインの進展は、AMOLED技術の中・大型市場への浸透を加速させると同時に、世界のディスプレイ産業競争地図を塗り替える契機にもなるだろう。Visionoxは今後も地方政府との戦略的協力を深化させ、産業チェーンの統合と高品質な製品開発を推進し、「中国発のディスプレイを世界のディスプレイに」とのビジョンのもと、グローバル市場での存在感をさらに高めていく構えだ。