2025年7月7日 The Elec
サムスンディスプレイは、2022年12月28日に米ITCに提出した特許侵害調査申請書で、中国・深圳などで自社特許を無断使用して製造されたOLED(有機EL)が米国に輸入され販売されていると主張した。これらの製品に対し、一般的排除命令(GEO:General Exclusion Order)および停止命令(CDO:Cease and Desist Order)を申請した。
しかし、ITCは2025年3月にBOEなどがサムスンの特許を侵害したと判断しつつも、輸入禁止命令は出さなかった。その理由は、輸入禁止に必要な「国内産業要件(Domestic Industry)」を満たしていないと判断されたためである。この決定に不服を唱えたサムスンディスプレイは、2025年5月中旬に米連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に控訴した。
「国内産業要件」の解釈が鍵
連邦巡回控訴裁判所では、ITCの判断に法律上の誤りがあるかを審理する。争点は、ITCによる「国内産業要件」の解釈と、サムスンが提出した証拠の法的評価に誤りがあったかどうか。この要件には、経済的要件と技術的要件の両方が必要である。申請時点で、以下のいずれかを証明しなければならない:
・十分な工場や設備への投資
・多くの人材や資本の投入
・R&D(研究開発)やライセンス契約などの実体的投資
さらに、該当特許に基づく製品が実際に存在することも証明しなければならない。
BOE側は「完全勝利」と主張
ITCがサムスンの輸入禁止請求を却下した際、BOEの代理人であるオリック法律事務所は「BOEがサムスンに完全勝利した」と自社サイトで主張した。また「米国消費者は、BOE製などの低価格なリファービッシュ(再生)スマホ用OLEDを引き続き購入できる」とも述べた。
ITCと米民事訴訟での戦いは継続中
サムスンディスプレイがBOEを相手に提起した営業秘密侵害調査事件のITC予備決定は、7月17日に発表予定(数回延期)。最終決定は11月17日に延期された。さらに、ITC以外にも米民事裁判でサムスンとBOEは対立中。現在、特許侵害訴訟4件、営業秘密侵害訴訟1件の計5件をサムスンがBOEに対して提起している。
サムスンは2023年6月、テキサス東部地裁で最初に提起した特許訴訟を今年6月に取り下げたが、同じ5件の特許を使い、バージニア東部地裁で再び訴訟を提起。この地裁は審理スピードが速いとされる。この5件のうち4件は、米特許審判部(PTAB)により有効と判断されており、残り1件の判断は未定。BOEはこれら4件についてCAFCに控訴している。BOEもサムスンを相手取り、2025年5月にテキサス東部地裁で特許侵害訴訟を提起している。