2025年6月16日 The Elec
サムスン電子がハイエンド液晶ディスプレイ(LCD)TVである「QLED TV」ラインナップの量子ドット(QD)シート構造を簡素化する技術を、ハンソルケミカルと共同で開発中であることが16日に判明した。QLED TVではQDシートが色再現性を高めている。サムスン電子は、人体に有害なカドミウムの代わりにインジウムを使用したQDシートを自社QLED TVに適用していると強調してきた。
サムスン電子とハンソルケミカルが開発中の新しいQDシート構造は、従来のQDシートと比較して両側のバリアフィルムがない。従来のQDシート構造は「バリアフィルム - PET - QD層 - PET - バリアフィルム」などであった。現在開発中のQDシート構造は、両側のバリアフィルムが除かれた「PET - QD層 - PET」などである。
従来のQDシートにおけるバリアフィルムは、バリアフィルムとPETの間に塗布(コーティング)されたQD層を水分と酸素から保護する役割を担っている。このため、サムスン電子がQDシートから両側のバリアフィルムを取り除くには、QD層を水分・酸素から保護する方策を確保する必要がある。
サムスン電子は、QD個々の粒子を封止(Encap)で包む技術を開発中だとされている。バリアフィルムがなくてもPETが基材(基板)フィルムの役割を果たすことができるため、QD層自体が水分・酸素に露出しない方策を見つければよい。この際、QD粒子封止工程追加による製造原価上昇分が、バリアフィルム除去による製造原価下落分よりも少なければ商業化できる。
サムスン電子がバリアフィルムをなくしたQDシートを開発中の理由は、製造原価のためである。現在、QDシート全体に占めるバリアフィルムの割合は40%前後とされている。このバリアフィルムは、日本の大日本印刷(DNP)が単独で供給している。
ある業界関係者は、「サムスン電子は従来のQDシートからバリアフィルムを取り除くための方法を数年間研究中だ」とし、「目標は製造原価の削減だ」と説明した。しかし、「量産適用には時間がかかるだろう」と付け加えた。
QLED TVのQDシートとは異なり、サムスン電子のQD-有機EL(OLED)TVに適用されているQD色変換層は、インクジェットプリンティング工程で製造する。QD-OLEDを量産中のサムスンディスプレイは、インクジェットヘッドノズルを使用してQDインクをバンク(隔壁)間に滴下し、赤(R)・緑(G)のQD色変換層を生成する。QD-OLEDは青色発光源を使用するため、別途の青(B)QD色変換層は存在しない(オーバーコート)。QD色変換層を形成したガラス基板上板と、薄膜封止(TFE)工程を終えたガラス基板下板の青色OLED発光源を貼り合わせると、QD-OLEDが完成する。
LCD製品であるQLED TVは、RGBカラーフィルターで実現された色がQDシートを通過することでさらに鮮明になる。QD-OLED TVは、青色発光源から出た光がQD色変換層を通過することで色を表現する。