2025年8月13日 Semi Display View
8月13日、韓国メディアの報道によると、米国国際貿易委員会(ITC)は、中国ディスプレイ大手BOE(京東方)に対し「限定的輸入排除命令(LEO)」を発出し、今後およそ14年8カ月にわたり米国市場へのOLEDパネル輸入を禁止する措置を下した。
ITCは先月11日に公表した暫定判断で、「サムスンディスプレイが優れたセキュリティ対策を講じていたにもかかわらず、BOEは不正な手段で営業秘密を入手・使用し、実質的な損害と深刻な脅威を与えた」と認定。制裁期間は、サムスンディスプレイが中核OLED技術を開発するのに要した14年8カ月を基準に設定された。
最終判断は11月に発表される予定だが、業界では覆る可能性は極めて低いとみられている。通常、LEOの期間は「不正利益を排除するために必要な時間」で算定されるが、今回は複数の個別技術や営業秘密の開発期間まで計算に含められた異例のケースとなった。さらにITCは、BOE中国本社および米国子会社による米国内でのマーケティング、販売、広告、在庫販売活動を全面禁止。事実上、BOEの米国での事業展開を封じる内容となっている。
ただし、iPhone完成品として米国に輸入されるパネルについては制裁対象外のため、短期的な市場シェアの変動は限定的と見られる。
市場調査会社UBI Researchによれば、2025年第2四半期(4〜6月)におけるiPhone向け小型OLEDパネル市場でのBOEのシェアは22.7%。Meritz証券のアナリスト、キム・ソンウ氏は「ITCの判断でBOEの使用が禁止された場合、アップルは当初、BOE採用モデルの販売地域を他地域に振り分ける可能性が高い」と分析。そのうえで「しかし中長期的には、BOE採用によるビジネス上の不確実性を考慮し、その割合は大幅に減少する可能性がある。この場合、サムスンディスプレイとLGディスプレイが中長期的に恩恵を受けるだろう」と述べた。
一方、米国議会下院からもITCへの圧力が強まっている。
米下院中国共産党特別委員会はITCに書簡を送り、BOEのOLEDパネル輸入禁止を要請。「BOEは製造過程で営業秘密を使用しており、国家安全保障に関わる問題だ」と主張した。委員会共同議長のジョン・マルナード氏は最近の書簡で、「米国の国家安全保障利益を守るため、不正に盗用した営業秘密で製造されたBOEのOLED製品の輸入を禁止すべきだ」と求めた。
狙いは、中国BOEからのOLEDパネル輸入を全面的に阻止すること。ITCはその翌日に今回の禁止命令を発表した。なお、昨年9月には同委員会が米国防総省に対し、BOEを「軍需品直接供給企業」としてブラックリスト入りさせるよう勧告しており、国家安全保障上の脅威として警告を発していた。