LGディスプレイ、TV用OLED DDIの搭載量を半分に削減


2025年7月29日 The Elec

 

LGディスプレイは、来年からテレビ用有機EL(OLED)に搭載するディスプレイドライバーIC(DDI)の数を半分に削減する。

 

業界によると、LGディスプレイは2025年からTV用OLEDのDDIにダブルレートドライブ(Double Rate Drive:DRD)方式を適用する方針を固めた。これに詳しい関係者は「LGディスプレイがDRD方式の適用方針を社内で確定した」と明かした。LGディスプレイは、この方式の導入に向けてDDI製造メーカーとの協議を進めているという。

 

DRD方式を採用した製品は、DDIの核心部品であるソースドライバーICの信号伝送量を2倍に高めることで、従来のDDI搭載量の半分でディスプレイを駆動できる。

 

ディスプレイを動かすDDIは、ソースドライバーIC(以下、ソースIC)とゲートドライバーIC(以下、ゲートIC)で構成される。ソースICは各画素に赤・緑・青の信号を送信し、ゲートICは画素を順に選択し、該当するソース信号がその画素に適用されるよう制御する。

 

ソースICの駆動速度を2倍にすれば、そのIC1つあたりの信号伝送能力も2倍に増加する。すると、同じ解像度を実現するために必要なソースICの搭載量は半分に減少する。この駆動方式をDRD方式と呼ぶ。

 

DRD方式は、液晶ディスプレイ(LCD)には2000年代からすでに適用されていたが、テレビ用OLEDにはまだ導入されていなかった。

 

LGディスプレイが来年発売予定の65インチTV用OLEDには、必要なDDIの数が従来の16個から8個へと削減される。75インチ以上のOLEDにおいても同様に16個から8個に減少する。なお、モニター用OLEDについては当面DRD方式の導入は予定されていないとされる。これは、モニター用OLEDの方がTV用よりも画素が小さく、フレーム速度が速いためである。

 

DRD方式の導入は、製造コストの削減を狙ったものである。TV用OLEDの普及率が低い最大の要因は価格が高いことである。LGディスプレイは、今月から減価償却が順次終了する中国・広州のOLED工場にも期待をかけている。この工場の生産能力は、8.5世代のガラス基板投入基準で月9万(90K)枚である。そのうち月6万(60K)枚分の減価償却が今月で終了し、残り3万(30K)枚分は来年前半末から後半初めにかけて終了する予定。減価償却が終われば製造コストはさらに下がる。LGディスプレイは、すでに減価償却が終了している韓国・坡州工場よりも、広州工場で大型OLEDを多く生産している。

 

部品業界では、今年のLGディスプレイの大型OLED出荷量を、TV用580万台、モニター用70~80万台、合計650万~660万台と推定している。昨年はTV用520万台、モニター用50万台の合計570万台だったため、前年比で80~90万台の増加となる。なお2023年の出荷量は410万台にとどまっていた。LGディスプレイは7月24日の第2四半期業績発表後のカンファレンスコールで「今年は大型OLEDを600万台中盤まで出荷する予定」と明らかにした。TV用とモニター用を合わせた数字である。

 

今年3月の株主総会で、チョン・チョルドンLGディスプレイ社長は「大型OLED事業は強化された顧客構造を土台に、超大型やゲーミング分野で販売を拡大し、コスト革新を通じて今年中に黒字転換を図る」と語った。

 

チョン社長の述べた「強化された顧客構造」には、サムスン電子の比重が大きい。LGディスプレイの大型OLED事業においては、LG電子とサムスン電子のOLEDテレビの出荷量が最も重要となっている。