2025年6月19日 SemiDisplayView
6月18日のニュースによると、Appleは、早ければ2027年に発売されるiPhoneシリーズに新型の低温多結晶酸化物(LTPO)薄膜トランジスタ(TFT)OLEDディスプレイパネルを適用する計画を評価している。新型LTPO OLEDの鍵は、駆動TFTに酸化物を適用するかどうかだ。酸化物の比率が増加すれば、消費電力を削減できる。
LTPO TFTは、低温多結晶シリコン(LTPS)TFTをベースとし、一部の駆動TFT(1つ)またはスイッチ(6~7つ)TFTに酸化物プロセスを採用する。LTPOは、LTPSプロセス後に酸化物プロセスで製造される。LTPS TFTは電子移動度が速いが、消費電力は高い。酸化物TFTは電子移動度が比較的遅いが、消費電力は低い。LTPO TFTは低温駆動で消費電力を削減できる。
Appleは、今年第3四半期頃に、2027年発売予定のiPhoneモデルに、駆動TFTにも酸化物を採用したLTPO OLEDディスプレイを搭載するかどうかを決定すると予想される。業界は、Appleが2027年に新型LTPO OLEDをiPhoneシリーズの薄型モデル「Air」に適用する可能性が高いと予測している。Airモデルは薄型であるため、特にバッテリー消費を抑える技術が必要とされる。一方、Proシリーズのハイエンドモデル(ProおよびPro Max)はAirモデルよりも厚いため、新型LTPO OLEDの適用需要は比較的小さい。
業界関係者の中には、iPhone Airが駆動TFTに酸化物を使用した新型LTPO OLEDを搭載すれば、TFTプロセスの増加に伴いパネルの製造コストも増加するため、そのモデルの販売価格は既存のPlusモデルよりも高くなると推測する者もいる。Appleは、今年下半期に発売予定のiPhone 17シリーズの4モデルすべてにLTPO OLEDを採用し、2つのスイッチTFTのみに酸化物を使用する計画だとされる。2026年発売予定のiPhone OLEDも、一部のスイッチTFTのみに酸化物を使用する予定だ。
従来の方式では、駆動TFT(OLEDの発光電流を制御)にLTPS(低温多結晶シリコン)を採用し、電子移動度が高いものの、リーク電流が大きく、消費電力が高かった。「LTPO第3世代」方式では、駆動TFTを酸化物(IGZOなど)に変更し、リーク電流を大幅に削減し、超低リフレッシュレート(最低1Hz)での安定した電圧維持をサポートする。
もう一つの大きな利点は、その消費電力が大幅に削減されることだ。酸化物駆動TFTのリーク電流はLTPSよりもはるかに低く、静止画や低リフレッシュレートの場面(常時表示など)では、消費電力を30%以上削減する。リフレッシュレートの適応性がより柔軟になり、1Hz~120Hzの動的切り替えをサポートし、ウェアラブルデバイスのバッテリー寿命を延ばしつつ、スムーズな体験を維持する。
現在、「LTPO第3世代」技術はまだ量産移行期間にある。その実際の性能は、最終製品メーカーの調整能力(色管理、放熱設計など)とユーザーシーンへの適合性に注目する必要がある。混合調光メカニズム(PWM+DC)は低輝度シーンで依然として視覚疲労を引き起こす可能性があり、特に敏感なユーザーグループには影響がある。また、リフレッシュレート切り替え時の瞬間的な輝度変動は、フリッカー感を悪化させる可能性がある。回路設計の複雑性もかなり顕著な問題である。駆動TFT材料の置き換えはプロセスを複雑にし、量産歩留まりとコスト管理も課題に直面する。さらに、焼き付きの懸念も問題である。酸化物層とLTPSの協調動作がピクセル老化を加速させる可能性があり、静的要素を長時間表示する際の焼き付きリスクは従来のOLEDよりも高くなる。
Appleは昨年発売されたApple Watch 10シリーズで、駆動TFTにも酸化物を適用した「LTPO第3世代」OLEDパネルを初めて採用したとされている。このパネルはLGディスプレイが供給した。サムスンディスプレイは今年、Apple Watch 11 OLEDの開発に参加した。その目的は、将来のiPhoneで、駆動TFTも酸化物に変更する新型LTPO OLEDパネルが採用される可能性に備えることだ。サムスンディスプレイも過去に一時的にApple Watch向けOLEDパネルを生産したことがある。