AI光通信が切り開く道…マイクロLEDのディスプレイ市場への参入を早める


2025年6月18日 UBIリサーチ

 

次世代ディスプレイ技術として注目されてきたマイクロLEDが、新たな応用分野で商業化の可能性を見出している。低い歩留まりと複雑な製造工程によりディスプレイ市場への参入が遅れていたが、最近、AI半導体間の高速光通信(Co-Packaged Optics, CPO)需要が増加し、Micro-LEDの実用性が再び注目されている。CPO分野は、小型、高速、低電力というMicro-LEDの特性とよく合致する分野であり、この市場での商業化がディスプレイへの参入を加速させる転換点となる可能性が高い。

 

Micro-LEDは、OLEDとLCDの長所を組み合わせ、高輝度、長寿命、焼き付きのない特性、優れた色再現性を提供するディスプレイ技術だ。ただし、本格的な市場拡大のためには、解決すべき技術的・製造的・経済的課題が存在する。

 

技術的には、数μmサイズのRGBチップを数百万個高精度に配列し接合する必要があり、そのための転写(Mass Transfer)工程は、速度、精度、歩留まりの面で依然として改善の余地がある。接合工程でも、熱ストレスや位置ずれのような精密制御技術が継続的に高度化される必要がある。

 

製造工程も最適化が求められる。1つのピクセル以上の欠陥が画面全体の品質に影響を与える可能性があるため、高精細検査と補正技術の高度化が不可欠であり、現在の歩留まりはパイロットライン基準で**約10〜30%**にとどまっている。自動化レベルと検査装置の精度向上も、今後の生産性確保のための主要な改善課題だ。

 

経済性の側面では、歩留まりと工程コスト構造の効率化が求められる。例えば、サムスン電子の110インチMicro-LED TV「The Wall」は現在150,000ドル前後で販売されており、素材・装置エコシステムも本格的な量産体制確立のための追加的な拡張が必要だ。

 

現在、Micro-LEDは超高級TVと商業用大型サイネージを中心にプレミアム市場に導入されており、将来的にはAR、IT機器など多様な製品群への拡張が期待される。業界全体でも工程の標準化とサプライチェーンの構築が着実に進展しており、このような流れは市場拡大の実質的な基盤につながる見込みだ。依然として多様な技術・工程関連の課題が存在するが、改善と進化を通じて解決できる段階的な課題として認識されている。

 

特に、非ディスプレイ分野での技術適用拡大は、Micro-LEDの実用性と信頼性を検証する上で肯定的な機会となっている。AIサーバーおよび高性能半導体システムは高速・低電力光通信環境を必要とし、これはMicro-LEDが保有する技術的特性と正確に合致する。既存の電気ベースのインターコネクトは発熱や帯域幅のボトルネックなどの限界を示しており、これを解決するために光信号ベースの通信構造であるCPO技術が急速に採用されている。

 

米国のスタートアップAvicenaは、この分野を先導的に開拓している代表企業であり、Micro-LEDベースの光通信技術であるLightBundle™ソリューションを通じて、AIおよびHPCシステムに適した高速・低電力インターコネクトを実現している。Avicenaは数千個のMicro-LEDアレイを並列に駆動し、数十〜数百Gbpsの伝送速度を実現しており、既存のVCSELに比べて低い発熱、低い駆動電圧、小型化および並列化の面で技術的優位性を示している。また、CMOSプロセスベースで製造可能なため、半導体パッケージとの統合にも有利だ。

 

LightBundle™ — microLEDを使って「データを動かす」(写真=Avicena)
LightBundle™ — microLEDを使って「データを動かす」(写真=Avicena)

 

光通信用Micro-LEDは、ディスプレイ用と比べて実装条件が単純である。多色素子や高解像度は必要なく、チップ数量も数千〜数万個レベルに制限されるため、歩留まりが多少低くても製品化が可能だ。実際にAvicenaをはじめとする一部企業はMicro-LEDベースの光通信ソリューションを通じてAIサーバー市場に参入しており、この市場では歩留まりよりも実質的な通信性能と長期信頼性確保が核心的な競争要素となっている。

 

相互接続(インターコネクト)の性能(写真=Avicena)
相互接続(インターコネクト)の性能(写真=Avicena)

 

AI光通信市場での需要拡大は、Micro-LEDの量産基盤を強化する重要な触媒となっている。生産量の増加、設備投資、材料サプライチェーンの拡大は、ディスプレイ市場でも歩留まり改善、工程自動化、コスト削減などの好循環効果につながる可能性がある。実際に一部の設備メーカーは、ディスプレイ用と光通信用工程を同時に対応できる統合設備を開発中であり、これは産業エコシステム全体に肯定的な信号として作用している。

 

Micro-LEDは、もはや単なるディスプレイ技術にとどまらない。AI光通信という実用的な応用分野でまず技術的可能性を実証し、商業化の基盤を固めており、この基盤はディスプレイ市場への本格参入を現実化する重要な鍵となることが期待される。