2025年7月1日 CINNO Research
CINNO Research産業ニュースによると、6月29日時点の複数の取材情報を総合すると、LG Display(以下LGD)は今後の戦略方針を明確にし、画面下カメラ(UDC)や封止層カラーフィルター(COE)などのOLED技術に集中投資し、これらの商用化を加速する方針です。これらの技術はスマートフォン向けOLEDと密接に関係しており、LGDが中小型OLED事業の回復を拡大するための鍵となる戦略であり、今後の市場拡大が期待されています。
LGDは、これらのOLED新技術の研究開発に1兆2600億ウォン(約1.3兆ウォン)を投資すると発表しました。このうち、7000億ウォンは坡州(パジュ)工場の技術開発および生産力向上に、残りはベトナムのOLEDモジュール生産ラインの建設・アップグレードに使われます。これは、LGDが中国・広州のLCD工場を売却した後、韓国内での初の大規模投資であり、市場でも注目を集めています。
現時点では「新技術」の詳細は公開されていませんが、信頼できる情報筋によると、UDC、COE技術に加え、画面の四辺がカーブする「四曲面スクリーン」技術も含まれるとのことです。
なお、これらの技術はいずれもLGDが量産に本格導入していない新分野です。ある業界関係者は、「今回の投資は主要顧客の将来的な製品計画に基づく技術準備であり、2027年までの投資完了後に実際の商用導入が始まる見込み」と語っています。これは、LGDがグローバル戦略顧客に向けて革新的技術を準備していることを意味します。
● UDC/UPC(画面下カメラ)技術について
画面下カメラ(UDC/UPC)や画面下赤外線センサー(UDIR)技術は、スマートフォンにおける完全なフルスクリーン化を実現する重要技術です。これにより画面に穴を開けずにカメラやセンサーを内蔵でき、没入感の高い表示体験が可能になります。
しかし課題も多く、カメラ性能と表示品質の両立が求められます。特に、透過率の向上や光の干渉の抑制といった高度な積層構造と製造技術が必要です。現時点では、解像度や画質の劣化が主な技術的障壁とされており、それらの克服が急務です。
LGDはこの投資を通じて、パネルの透過率を向上させ、光干渉を低減し、最終的に解像度を3倍以上に引き上げることを目指しています。ただし、そのためには画素サイズの縮小やソフトウェア/ハードウェアの向上、高精度な測定機器の導入などが必要となり、LGDの技術開発力と生産力が問われることになります。
● COE(Color filter On Encapsulation)技術について
COE技術は、スマートフォンの薄型化と低消費電力化に寄与する次世代OLED技術です。これは従来必要だった偏光板を廃止し、封止層に直接カラーフィルターを形成する手法であり、反射防止機能もパネル内に統合します。
これにより、ディスプレイの厚さを削減でき、画面の輝度を高めることで消費電力も削減されます。この方式の鍵は、黒色PDL(Pixel Define Layer)と呼ばれる光リソ材料で、画質を劣化させる光漏れや色の混ざりを防ぐ役割があります。このため、LGDは新たに露光装置の導入を予定していると見られます。
● 四曲面スクリーン技術について
一方、ベトナム工場のモジュールラインへの投資は、主に四曲面スクリーン技術の開発と適用が目的と見られています。この技術は、ディスプレイの左右と上下の全4辺を曲面化し、完全なベゼルレス(縁なし)スマートフォンを実現するもので、より未来感のあるビジュアル体験を提供します。
このための投資には、3Dラミネート装置などの設備導入が含まれるとされており、LGDの製造工程における技術力向上にもつながる見込みです。
今回のLGDの動きは、OLED技術の次世代化に向けた明確な布石であり、2027年以降の本格的な商用展開が期待されます。