LGディスプレイの1兆2600億ウォンの投資の背景、次世代の中小型OLEDを狙う


2025年6月17日 ET News

 

LGディスプレイが1兆2600億ウォンを新技術に投資するのは、中小型有機EL(OLED)事業を強化するための戦略と解釈できる。LGディスプレイはこれまで、テレビに使われる大型OLEDに比べてスマートフォン用OLEDで相対的な弱点を見せていたが、今や競争力を備え、未来市場への備えと開拓に乗り出した。

 

今回の投資は、スマートフォン、タブレットなどに使われる中小型OLEDが対象だ。1兆2600億ウォンのうち約7000億ウォンを坡州に、残りを海外工場に投入する予定だ。

 

坡州は、第6世代蒸着装置などOLEDパネルを製造する中核設備が備わった場所だ。LGディスプレイの心臓とも言える拠点であり、次世代モバイル機器用OLEDの量産が予想される。

 

同社は新技術に関する具体的な内容は公開していないが、モバイル機器のフォームファクターが急変しており、人工知能(AI)により電力消費が話題となっていることから、OLEDパネルをより薄くしながら電力効率を高める技術が実現されると予想される。

 

残りの投資額は海外のモジュール工場に投入される見込みだ。OLEDパネルはディスプレイ駆動チップ(DDI)やフレキシブルプリント回路基板(FPCB)などと結合して初めて機器に搭載可能な状態になる。パネルだけでは動作しないため、これを可能にするモジュール工程は必須だ。パネルが変更されれば、それを動作させる部品も変更する必要があるため、LGディスプレイはモジュール投資も同時に進めていると分析される。

 

LGディスプレイは今回の投資を通じて、OLEDへの事業構造再編を加速させる見込みだ。

 

同社はこれまで、大型事業では中国TCLの子会社CSOTに広州大型LCD工場を売却し、製造をOLED中心へと転換した。年内に大型OLED工場の減価償却終了と広州大型LCD工場の売却による原価削減効果により、黒字転換も期待される状況だ。

 

一方、中小型OLEDでは後発企業だった。競合他社に比べて遅れて中小型OLED事業に参入したからだ。事業過程で量産に支障をきたすこともあった。しかし、最近になって技術力を向上させ、主要顧客に中小型OLEDをタイムリーに供給した。このような自信を基盤に、中小型OLEDの技術力をさらに引き上げ、事業成果を最大化しようとする試みだと分析される。

 

LGディスプレイは世界最大の97インチOLED TVパネルから27インチゲーミングモニター用パネル(大型)、タブレットなどのIT用パネル(中型)、スマートフォンおよびスマートウォッチ用パネル(小型)など、OLEDポートフォリオを完成させ、事業競争力を一層強化する構想だ。

 

昨年時点で、LGディスプレイ全体の売上高に占めるOLED事業の割合は、過去最高の55%を記録した。高付加価値製品であるOLEDの比重が増加したことで業績も急速に改善され、今年は年間黒字転換を達成すると期待されている。