LGディスプレイ、「ツー・スタック・タンデム構造」において青色燐光有機ELディスプレイの実用化を検証


2025年5月1日 The Elec

 

LGディスプレイは、量産ラインにおいて青色燐光有機EL(OLED)の製品化性能を世界で初めて検証したと1日に明らかにした。OLEDの発光層が2層の「ツー・スタック・タンデム構造」において、1層に燐光方式を適用した。これにより、従来のOLEDに比べて消費電力を15%削減できる。

 

1層目(下層)に青色蛍光、2層目に青色燐光材料を適用したハイブリッド・ツー・タンデム構造(資料=LGディスプレイ)
1層目(下層)に青色蛍光、2層目に青色燐光材料を適用したハイブリッド・ツー・タンデム構造(資料=LGディスプレイ)

 

OLEDの発光方式は大きく分けて燐光と蛍光の2種類がある。現在商用化されているOLEDでは、光の三原色である赤(R)・緑(G)・青(B)のうち、赤と緑の素子には内部発光効率が100%の燐光素子が使用されているが、青の素子には内部発光効率が25%にとどまる蛍光素子が使われている。LGディスプレイ、サムスンディスプレイ、米国のUDCなどは、この従来の蛍光青色OLED素子を代替する技術を開発してきた。

 

LGディスプレイは、OLED発光層の1層目に青色蛍光、2層目に青色燐光を積層するハイブリッド・ツー・タンデム構造を採用した。LGディスプレイによれば、蛍光方式の利点である安定性と、燐光方式の利点である低消費電力を兼ね備えることで、従来のOLEDと同等の安定性を保ちながら、電力消費量を15%削減することができた。

 

LGディスプレイは、量産ラインにおいて性能評価、光学特性、プロセス性などすべての製品化段階まで検証を終えたのは世界初であり、UDCと共同で製品化の検証も完了したと強調した。関連特許は韓国と米国などにすべて単独で出願済みである。

 

LGディスプレイはこのハイブリッド・ツー・タンデムOLEDを、今月11日から米国で開催される世界最大のディスプレイ展示会SID(国際情報ディスプレイ学会)で公開する予定である。応用分野はスマートフォンやタブレットなどのIT製品である。LGディスプレイは、近年AI搭載PCやAR・VR機器など、高画質と高効率の両方を求める製品が増えており、青色燐光技術の適用範囲が急速に拡大するとの見通しを示した。

 

LGディスプレイのCTOであるユン・スヨン副社長は、青色燐光製品化の検証成功は次世代OLEDへ向かう革新の道標になると述べ、この技術により将来の市場を先取りする効果を享受できるとの見解を示した。

 

OLEDの発光方式は燐光と蛍光に大別される。燐光方式は、発光(励起状態から基底状態への遷移)エネルギーのうち25%に相当する「一重項励起子(singlet exciton)」と、残り75%の「三重項励起子(triplet exciton)」の両方を利用するため、内部発光効率が最大100%に達する。一方、蛍光方式は一重項励起子のみを利用するため、内部発光効率は25%にとどまる。青色燐光素子は色純度や寿命の面で課題を抱えており、このため商用OLEDでは青色蛍光素子が用いられている。

 

(資料=LGディスプレイ)
(資料=LGディスプレイ)