第3四半期のテレビ向けのOLEDディスプレイの出荷分析


○2022年10月31日 UBIリサーチ Weekly Display Industry Analysis Reportより

 

第3四半期TV用OLED出荷量は235万台で、前四半期(2Q22)の196万台に比べて39万台増加している。昨年の同四半期(3Q21)の193万台より42万台多く、TV用OLED市場が着実に成長していることを示している。昨年第3四半期まではLGディスプレイのWRGB OLEDのみOLED TVに使われたが、2021年第4四半期からQD-OLED生産を始めたサムスンディスプレイの加勢によりTV用OLED市場が成長しているとみられる。

 

しかしながら、LGディスプレイだけの実績を見ると、今年の第1四半期から第3四半期までの総出荷量は513万台だが、昨年同じ期間の出荷量は533万台となっており、今年の出荷量が20万台減少している。 今年の四半期ごとの実績は昨年に比べてすべて低い数値である。 ウクライナ戦争と米国の金利引き上げがOLED TV市場の成長に影響を及ぼしているからだ。

 

LGディスプレイのWRGB OLEDパネル最大の顧客会社であるLG電子は、昨年OLED TVを380万台販売した。今年の販売目標は550万台であったが、LG電子の2022年の予想販売量は410万台で、目標値には達しないものの、8%の成長率を達成すると予想される。

 

LG電子のOLED TV販売が好調であるにもかかわらず、TV用OLEDパネル出荷量が昨年より少ない理由は、SonyのOLED TV販売不振が最も大きい原因だ。

 

ソニーは昨年120万台のOLEDテレビを販売し、OLEDパネルは140万枚ほど購入した。しかし今年、ソニーのOLED TV予想販売量は90万台程度である。このうちQD-OLED TVが5~10万台程度を占めており、WRGB OLEDパネルを使ったOLED TV販売は80~85万台水準にとどまるとみられる。ソニーの昨年のWRGB OLEDパネル購入量と比較すると、今年は50万台程度が減少することになる。Sonyの販売実績低下は主にヨーロッパ市場で発生した。 LG電子がOLED TV価格を引き下げて販売量を増やすにつれて、ソニーの販売量が減少したと推定される。ソニーは価格引き下げによる販売量増大ではなく、営業利益を優先した政策を維持したためだ。ソニーは昨年、液晶テレビを含めて1000万台程度を販売したが、今年は液晶テレビの価格も維持したため、全体のテレビ販売量は600万台水準に急激に下落した。来年も価格維持政策を固守すれば、ソニーの予想テレビ販売量は今年と同じく600万台水準と予想されている。

 

最近、LGディスプレイはWRGB OLEDパネルの販売量を増大させるため、Sonyに来年に購入する第1四半期の量を今年中に購入してもらうことを要請したが、Sonyはまだ明確な立場を示していない。

 

サムスン電子の今年のOLEDテレビ販売目標は40万台で、来年は100万台だ。 Sonyは、来年にQD-OLED TV販売量を10万台程度を目標としている。これにより、サムスンディスプレイの2023年予想QD-OLEDパネル出荷量は130万台水準になると推定される。サムスンディスプレイはパネル製造コストを下げるために、TFTマスク工程を9工程から7工程に減らす技術開発を完了し、顧客からの製品承認を待っている。

 

LGディスプレイは来年モデルにMLA(micro lens array)を適用して輝度を上げ、同時に製造コスト削減のためYG(黄緑色)発光層を除去した構造を適用する予定だ。

 

世界中の経済不況が続く状況で、サムスンディスプレイのOLED製造コストの削減とLGディスプレイのOLED性能の向上により、限られたOLED TV市場でパネル競争はさらに激化するとみられる。