日韓の製造装置メーカーが受注拡大、TCL華星「T8」プロジェクトが2027年IT向け有機EL量産へ加速


日付:2026年6月29日

出典:SemiDisplayView(中国)

 

中国の入札情報プラットフォーム「China Bidding」が公開した情報によると、2026年6月28日、TCL華星(CSOT)は広州の8.6世代インクジェット印刷有機EL生産ラインにおいて、SFA、HIMS、Display Device、HB Solutionの4社の韓国製造装置メーカーを中核サプライヤーとして正式に選定した。これは2026年4月および5月にYASやICDなど韓国企業から蒸着やエッチングの中核装置を集中調達したのに続く、第2弾となる大規模海外製造装置発注であり、総投資額100億元規模の同ラインにおける製造装置調達が本格的な導入段階に入ったことを示している。

 

8.6世代印刷有機ELライン向けに韓国製造装置が中核工程を担当

産業チェーンの情報によれば、今回選定された4社は印刷有機ELの全工程における重要な特殊プロセスおよび歩留まり検査領域を分担する。SFAは真空蒸着補助ユニット、LLOレーザー剥離、基板フィルム貼付工程などの中核プロセス製造装置を供給する。HIMSは超大型基板に対応した高精度マスク光学検査装置を提供し、画素形成の精度を担保する役割を担う。

 

Display Deviceはアレイ工程における基板の電気的欠陥検査を担当し、前工程で発生する断線やショートなどの不良を全数検査する。一方、HB SolutionはELBエッジ遮光塗布、膜厚測定、色度光学検査装置を供給し、インクジェット印刷方式特有のエッジ光漏れや色ムラといった課題の解決を図る。

 

「コア装置先行・検査装置後行」の調達戦略と多国籍サプライチェーン

今回の段階的調達は、高世代パネルラインにおける標準的な構築プロセスに基づき、「コア成膜装置を先行し、その後に精密検査およびモジュール補助装置を導入する」という戦略で進められている。

 

すでにTCL華星は、日本製のインクジェット印刷装置をRGB発光層形成の中核装置として採用しており、これに韓国製の真空、レーザー、検査装置群を組み合わせる一方で、中国国内メーカーからは搬送装置、炉設備、シール材などの補助装置・部材を大量に採用している。この結果、「日本製コア印刷装置+韓国製特殊プロセス装置+中国製補助装置」という多層的なサプライチェーンを構築し、特定地域への依存リスクを分散する体制を確立している。

 

CSOTの8.6世代生産ラインの鳥瞰図。〈写真 中国建設第3工程局〉
CSOTの8.6世代生産ラインの鳥瞰図。〈写真 中国建設第3工程局〉

 

2027年量産を見据えたIT向け有機EL市場への本格参入

業界分析によれば、現在の8.6世代IT向け有機ELの供給能力は依然としてサムスンディスプレイが主導しており、ノートPC、デスクトップモニター、タブレットといった中大型有機EL市場は急速な需要拡大局面にある。

 

TCL華星の広州8.6世代印刷有機ELラインは総投資額約300億元に達し、2027年末までに製造装置の搬入完了および量産立ち上げを計画している。インクジェット印刷方式は材料ロスが少なく製造コストを抑制できる利点があり、量産開始後は中国本土における高世代IT向け有機EL量産の空白を埋めると同時に、中韓の二極供給体制を形成し、最終製品メーカーのパネル調達コスト低減にも寄与すると見られている。

 

国産化の課題と韓国ハイエンド製造装置導入の現実的判断

一方で、韓国製ハイエンド製造装置の導入が続く背景について、業界関係者は技術的な制約を指摘する。8.6世代の超大型基板(2290×2620mm)とインクジェット+真空複合プロセスに対応する製造装置については、中国国内メーカーによる実証データがまだ十分ではない。

 

中国の装置メーカーは主に6世代フレキシブルディスプレイ(スマートフォン向け有機EL)ラインでの実績を積み上げてきた段階であり、8.6世代向けの検査装置や蒸着装置の量産検証には今後2〜3年のデータ蓄積が必要とされる。そのため、現時点では成熟した韓国製装置を採用することが、歩留まり確保と量産立ち上げ期間短縮のための現実的な選択となっている。

 

中国産サプライチェーン育成とT8プロジェクトの建設進展

同時にTCL華星は、中国国内サプライチェーンの育成も継続している。自動化搬送装置、乾燥炉、基本真空チャンバーなどの補助装置はすでに大規模に国産化されており、国内装置メーカーと連携した8.6世代印刷有機ELの一括製造装置開発も進められている。今後の第2期ラインでは、国産装置の採用比率を段階的に引き上げ、短期的な量産目標と長期的な産業自立の両立を図る計画である。

 

2026年5月8日には、TCL華星の第8.6世代印刷有機EL生産ライン第1期プロジェクト(通称T8プロジェクト)が建屋の上棟を完了した。同プロジェクトは2025年11月30日の着工からわずか151日で上棟に至り、業界最速記録を更新するとともに、世界初の量産型G8.6世代印刷有機ELラインの建設が新たな段階に入ったことを示している。

 

今回の第2弾韓国装置メーカーの選定完了により、TCL華星8.6世代印刷有機ELラインの構築ロードマップは一層明確となった。量産開始後は、同社のLCD、中小型フレキシブルディスプレイ、中大型印刷有機ELを網羅する技術ポートフォリオが完成し、グローバルIT向け高付加価値ディスプレイ市場への本格参入と、中国ディスプレイ産業の中大型有機EL分野における技術・生産能力の飛躍的向上が期待されている。