サムスンディスプレイ、アサン第6世代有機ELライン増設へ―最大4兆ウォン投資の全貌


2026年6月30日

出典:The Elec

 

アサン工場における第6世代有機ELライン増設の概要

サムスンディスプレイは、韓国・忠清南道アサンキャンパスにおいて第6世代有機EL生産ラインの増設を決定した。これは2023年に発表された第8世代IT用有機EL投資以来、約3年ぶりとなる新規投資である。

 

今回の増設はA4工場内に新たな第6世代有機EL製造装置を導入する形で行われ、月産能力は1万5,000枚規模に達する見込みである。ライン名称は現時点で未定だが、既存設備の撤去によって確保されたスペースを活用するため、製造装置の搬入や設置に大きな障害はないとされている。既存の生産基盤を活かしつつ、ボトルネック工程の改善と次世代製品への対応力強化を目的とした投資である。

 

製造装置投資の詳細とコスト構造

具体的な投資スケジュールは2026年8月頃に明確化される見通しであり、その後は製造装置の発注、製作、搬入、設置、セットアップといった工程が順次進められる。投資は2026年と2027年に分割して実施される予定で、段階的に導入が進む。

 

主要製造装置として、露光装置はニコンが14台供給する計画であり、蒸着装置についてはキャノントッキが1台担当すると見られている。当初、露光装置は10〜11台規模と予想されていたが、その後の見直しにより最終的に14台体制へと拡大された。

 

投資総額は最大で約4兆ウォンに達する見込みである。露光装置は1台あたり約300億ウォンとされ、14〜15台で約5,000億ウォン規模となる。さらに前工程の製造装置を含めると約1兆ウォン規模となり、後工程設備、建設費、自動化システム、搬送装置、予備費などを加えることで、総投資額は3兆〜4兆ウォンに達すると推定されている。

 

サムスンディスプレイの新社屋「Samsung Display Research(SDR)」(写真=サムスンディスプレイ) 
サムスンディスプレイの新社屋「Samsung Display Research(SDR)」(写真=サムスンディスプレイ) 

 

次世代製品需要拡大と生産能力強化の背景

サムスンディスプレイのA3およびA4ラインは中小型有機ELの主力生産拠点であり、現在の稼働率は80〜90%に達しているとされる。こうした高稼働状況に加え、今後の需要拡大に対応するため、追加投資が不可欠となっている。

 

特に、アップルのフォルダブルiPhoneやiPhone発売20周年モデル、さらには4面ベンディング有機ELといった次世代製品の登場が見込まれており、これらは従来のスマートフォンよりも大面積パネルを必要とする。そのため、同じ出荷台数でも必要となる有機EL面積が増加し、既存ラインの負荷が大きくなる。

 

また、新たな需要分野として浮上しているiPad miniやフォルダブル機器も、一般的なスマートフォンよりパネルサイズが大きく、特にフォルダブル有機ELは展開時に画面面積が拡大するため、安定供給には追加の生産余力が不可欠となる。さらに、4面ベンディング技術はパネル四辺を曲げてベゼルレスデザインを実現するため、有機EL使用量の増加を伴う。

 

今回の増設投資は、サムスン電子が発表した総額67兆ウォン規模の次世代ディスプレイ戦略とも連動している。この戦略にはフォルダブルなど次世代スマートフォン向けディスプレイや超高解像度マイクロディスプレイの生産拠点構築が含まれており、アサンにおける第6世代有機ELライン増設はその中核プロジェクトの一つと位置付けられている。

 

今回の投資は、中小型有機EL市場におけるサムスンディスプレイの競争力維持と、次世代製品への対応力強化を目的とした重要な戦略的施策であり、今後の有機EL市場動向に大きな影響を与えると見られている。